作品に詰まったデンマークならではの妙味
どうだろう。この時点ですでに予想とかなりかけ離れているのではないだろうか。まさにジャンルレス。枠にはめようとすればするほど、形を変えて逃げていく。それに加えて、本作には国内でヒットしたのも頷けるデンマークらしさが詰まっている。
まずは冒頭の時点で「時間にルーズな外国人の取引相手にイライラするトーキッド」の姿が描かれるのだが、「デンマーク人は時間を守る」という国民性を知っていると、もうこの時点でニヤリとするものがある。それに40歳にして人生の再出発について考えるのも、この国ならでは、という気がする。これは想像でしかないが、再就職の支援であるとか、いくつも仕事を掛け持ちするのも当たり前であるとか、そういうデンマーク社会のあり方から考えても、型にはまらない多様な可能性に満ちているのではないか。

『ブレイカウェイ』© M&M Rights ApS og DR TV-Drama
さらに4人のキャラクターがそれぞれに個性的で、一筋縄ではいかないのも面白い。単なる表面的な「奇抜な4人」ではなく、各々に過去があり、ディテールがあり、ひとつひとつ襞をめくるように型にはまらない人間性が見えてくる。それでいてメンバーが互いに優劣のレッテルを貼らず、各々のアイデンティティや生き方を尊重し合っているのも、この国のあり方が垣間見える部分なのかも。
さらに物語はブラックユーモアを加味しながら、我々を予測不能な境地に連れ出す。生死、家族、友情という要素をクレイジーなエネルギーで包み込み、それでいて自然に満ちた映像の美しさがあり、かと思えばバイオレンスもある。ミケルセンが演じるぶっ飛んだ”銃マニア”のアーニーも、物語を大いに盛り上げ、かき乱しつつ、どこか微笑ましい一面を併せ持つ。