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『ライダーズ・オブ・ジャスティス』アナス・トマス・イェンセン監督 仲間の俳優をイメージして脚本を書く喜び【Director’s Interview Vol.176】

© 2020 Zentropa Entertainments3 ApS & Zentropa Sweden AB.

『ライダーズ・オブ・ジャスティス』アナス・トマス・イェンセン監督 仲間の俳優をイメージして脚本を書く喜び【Director’s Interview Vol.176】

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“北欧の至宝”と呼ばれ、日本でも大人気のマッツ・ミケルセン。祖国デンマークで彼が最も信頼を寄せている監督の一人が、アナス・トマス・イェンセンだ。これまでマッツを起用した映画は5本に上る。


そんな2人が組んだ最新作が『ライダーズ・オブ・ジャスティス』。妻が列車事故で亡くなったと知らされた軍人のマークスが、任務中のアフガニスタンから急遽デンマークへ帰国。残された娘と悲しみを分かち合う彼だが、事故の原因に犯罪組織が絡んでいると聞き、復讐を決意する。その計画に協力するのは、数学者や顔認証のエキスパートなど“頭脳派”の面々。一筋縄ではいかない復讐劇に、過激なアクション、思わぬユーモアも盛り込まれ、異色な味わいの一作に仕上がっている。


作品にかけた思いや、マッツ・ミケルセンとの関係などを、アナス・トマス・イェンセン監督に聞いた。


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癖のある男たちの集団劇で自己を探求



Q:あなたは映画監督であると同時に、ハリウッド作品の『ダークタワー』(17)など脚本家としても活躍しています。自分で監督するかどうかで、脚本へのアプローチも違うのでしょうか。


イェンセン:たしかに違うと思いますね。依頼された脚本の場合は、監督に合わせてコメディ、人間ドラマなどジャンルを意識します。しかし自分で監督すると決めた作品は、いくつものジャンルを混在させようとします。その場合、作品全体に強い愛を込めながら執筆するわけですが、自分で監督するなら1〜2年の歳月をその作品に捧げる覚悟も必要になります。本当にこの物語を、自分で撮って観客に伝えたいのか? そこまでの覚悟がない時は、他の監督に任せることにしています。


Q:あなたの監督・脚本作では『アダムズ・アップル』(05)も、この『ライダーズ・オブ・ジャスティス』も、一癖も二癖もある男たちが登場しますね。


イェンセン:たしかに私は男たちの世界を探求する傾向があるかもしれません。とくに自分自身を偽ったり、よく見せようとするキャラクターが好みですね。とかく男同士のドラマはマッチョさが強調されがちですが、私が好むのは弱さも魅力の男たち。時代が求めるような女性が中心の映画をなぜ撮らないのか自問すると、私自身が男性で、自分を探求したいからだと結論付けてしまいます。



『ライダーズ・オブ・ジャスティス』© 2020 Zentropa Entertainments3 ApS & Zentropa Sweden AB.


Q:そういった男たちが“集まる”のも、あなたの映画の特徴です。


イェンセン:一般社会の基準からハミ出た男たちが、寄り集まって小さな社会を作る。たしかにそれは私の作品のパターンですね。だってそこには強い絆と安らぎが生まれるでしょう? 私の作品を観た心理学者によると、何か問題のある家庭環境で育った人の創作物だそうです(笑)。


Q:その風変わりな男たちの中でも主人公のマークスは強烈なインパクトです。アフガニスタンに従軍した兵士の役ですが、デンマークではこの設定は一般的なのですか?


イェンセン:こうした兵士は、私たちにとってリアルな存在です。基本的に兵士は若い世代が中心で、軍隊の規模も小さいのですが、アフガニスタンやイラクへの派兵は日常風景ですね。


Q:劇中では、事件の重要なポイントとして「デンマークのサンドイッチは美味しくない」と語られますが、それも事実ですか?


イェンセン:間違いなく、イエスです(笑)。デンマークのサンドイッチは(米ドル換算で)10ドルくらいと高いのに、草の味しかしません。でも私の子供たちのような若い世代にはなぜか人気なんです。そうした不条理に対するささやかな抵抗心として、サンドイッチのネタを入れました。





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