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『小川のほとりで』お酒と寸劇づくりが織りなす珠玉の会話/群像劇

©2024 Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved.

『小川のほとりで』お酒と寸劇づくりが織りなす珠玉の会話/群像劇

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舞台は大学 唐突に始まる寸劇づくり



 物語は姪と叔父の久方ぶりの再会から始まる。姪のジョニム(キム・ミニ)はソウルの女子大学で教鞭を執る講師で、彼女が出迎える叔父シオン(クォン・へヒョ)はちょっと前まで俳優・演出家として広く知られた人。何かしらの事情で仕事が無くなり、今では小さな書店を営んでいるらしい。


 数分間の取り止めのない会話を交わして二人は、演劇祭を間近に控えた大学の構内へ。実は、ジョニムが担当する寸劇グループで男女間のもつれが生じて演出家が辞して、急遽叔父が代役として手伝うことになったのだ。さすがこの手の仕事に慣れているだけあり、生徒たちの空気にすんなり溶け込んでいく叔父。ほんの10日間の準備期間の中、彼はいかなる人間関係を築くのか。そして肝心の寸劇は無事完成するのだろうかーー。



『小川のほとりで』©2024 Jeonwonsa Film Co. All Rights Reserved.


 このあらすじに触れた多くの方が真っ先に気になるのは「叔父の過去」だと思うが、これはホン・サンス作品に頻発するあるあるで、決して全てを明かさない。あくまで会話の範疇で匂わせる程度。なので作品の最後で伏線回収されるなんて甘い考えを持っていると、逆に見るべきものを見逃してしまうから注意が必要だ。


 私たちにできるのは、何となくの雰囲気で彼らの会話を見つめ、表と裏、もしくは過去と未来にあるものに想像力を巡らすことのみ。あらかじめこのスタイルを理解しておくと「語る」「語らない」のバランスがむしろ心地よく、相変わらずのお酒の力も相まって、我々は驚くほど自然に、穏やかな人間関係の渦へと引き込まれていくはずである。




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