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『世界一不運なお針子の人生最悪な1日』針と糸を超絶駆使したアイディアと仕掛けが楽しすぎる快作!

© Sew Torn, LLC

『世界一不運なお針子の人生最悪な1日』針と糸を超絶駆使したアイディアと仕掛けが楽しすぎる快作!

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ベースとなった短編制作のきっかけとは?



 この映画の醍醐味は、スクリーン上に映し出されるストーリーだけではない。人生の途上でフレディ・マクドナルド自身の身に及んだ「3つの決断」も非常に魅力的なのだ。


 最初の転機となったのは本作のベースとなった短編の制作である。きっかけは彼が夢見る映画製作の進路としてAFI(アメリカン・フィルム・インスティテュート)への入学が浮かんだこと。ここへの出願課題が「心変わり(a change of heart)」をテーマにした短編制作だったのだ。


 審査する側を唸らせ、資質ありと納得させるためにいかなるアイディアが必要か。製作パートナーの父と共に試行錯誤した挙句、彼は憧れのコーエン兄弟が『ノーカントリー』(07)で描いたような緊迫したサバイバル状況を思いつく。


 だが、その舞台は『ノーカントリー』の荒野とは正反対の透明感に満ち溢れたスイス。母がスイス系で、彼自身もパスポートを持っており、マクドナルドは15歳の頃に家族揃ってチューリッヒに引っ越したのだとか。勝手を知ったる国で巻き起こる「心変わり」をモチーフにした風変わりなテイストは、インパクトといい斬新さといい、あまりに絶妙だった。


 結果、彼の名を一躍、業界内へと知らしめた短編がこちらである。(注:もしも純粋に長編作を楽しみたい方はご鑑賞後に試聴されることをお勧めします)




名匠ジョエル・コーエンからの思いがけないアドバイス



 この短編はフレディ・マクドナルドにもう一つの転機をもたらした。ある日、憧れのジョエル・コーエンが「コーヒーでも飲みながら話をしよう」と連絡してきたのだ。


 この時、今後の展望について悩んでいたマクドナルドに対して、コーエンは「この短編をもとにしてインディペンデントの長編映画へと発展させるべきだ。僕らが『ブラッド・シンプル』でやった手法でやればいいんだよ」とアドバイスしたのだ。



『世界一不運なお針子の人生最悪な1日』© Sew Torn, LLC


 ちなみに映画ファンにはお馴染みだが、コーエン兄弟は長編デビュー作『ブラッド・シンプル』(84)を手がけるにあたり、まずは低予算で予告編映像を製作し、そのフィルムと16mm映写機を携えて出資者のもとを巡って資金調達したことで知られる。


 もしジョエル・コーエンの励ましがなければ、マクドナルドが長編版『お針子〜』へ舵を切ることはなかったかもしれない。





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