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『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』技術革新を牽引したキャメロンが描く“家族の物語”(前編)

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『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』技術革新を牽引したキャメロンが描く“家族の物語”(前編)

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ヘッドマウントカメラ(HMC)の開発



 しかし、こうした父子の葛藤や感情の揺れが観客に届くためには、2つの条件が必要になる。1つは高度なフェイシャル・キャプチャー(顔の表情のキャプチャー)技術だ。1作目から、この開発を担ってきたのが、ピーター・ジャクソンがオーナーを務めるWeta Digital(現Wētā FX)社だ。


 もちろん『アバター』以前にも、フェイシャル・キャプチャーを用いた映画は存在している。例えば『WoW』の記事( https://cinemore.jp/jp/erudition/2775/article_2776_p2.html#a2776_p2_1 )でも触れたが、ロバート・ゼメキス監督の『ベオウルフ/呪われし勇者』(07)がそうだ。この時は顔にビッシリ電極を貼り付けて、筋電を測定するという方法を採っていたが、この技法は俳優たちから不評で、これ1作で終わってしまった。


 また80歳の老体で生まれ、歳を取るごとに若返っていく男の人生を描く『ベンジャミン・バトン 数奇な人生』(08)では、年齢に応じた代役の身体に、フェイシャル・キャプチャーしたブラッド・ピットのCG頭部を合成している。この場合、撮影現場では別の俳優が身体演技だけを担当。ピットは後日、スタジオでそのビデオを見ながら、椅子に座って表情とセリフを別撮りしている。この時、彼の顔に蛍光染料を塗り、周囲150度を囲む28台のカメラで三角測量し、数千の点群データで記録するMova Countour社のフェイシャル・キャプチャー・システムを採用していた。だがこの方法では、アフレコのように身体の演技と顔の演技が、空間的にも時間的にも分離してしまった。そこで、これを現場で同時に演じる、ライブキャプチャーの技術が求められる。


 そこでキャメロンは『アバター』のために、もっと実用的なフェイシャル・キャプチャー技術を求めた。当時Weta Digitalのバーチャル・プロダクション・スーパーバイザーを担当していたグレン・デリーは、頭部に小型赤外線カメラを装着する、ヘッドマウントカメラ(HMC)を考案する。これならば俳優たちは、顔にペイントやシールでマーキングするだけで済み、キャメロンの要求を実現させた( https://cinemore.jp/jp/erudition/2775/article_2776_p2.html#a2776_p2_1 )。




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