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『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』技術革新を牽引したキャメロンが描く“家族の物語”(後編)

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『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』技術革新を牽引したキャメロンが描く“家族の物語”(後編)

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※前編はこちらから



『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』あらすじ

舞台は、神秘の星パンドラ──地球滅亡の危機に瀕した人類はこの星への侵略を開始。アバターとして潜入した元海兵隊員のジェイクは、パンドラの先住民ナヴィの女性ネイティリと家族を築き、人類と戦う決意をする。しかし、同じナヴィでありながら、パンドラの支配を目論むアッシュ族のヴァランは、人類と手を組み復讐を果たそうとしていた。



ジェームズ・キャメロンは、常に映画技術の限界を押し広げながら、物語の核心を見失わない作家だ。『アバター:ファイヤー・アンド・アッシュ』(以下FaA)はその到達点であり、同時に次の章への静かな予告でもある。後半となる今回は、作品を支えた物理シミュレーションやレンダリング、コンポジットなどの技術について解説する。


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水の物理シミュレーション:LokiとPahiの革新



 パンドラの世界を表現する上で重要となるのが、『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(以下WoW)の記事( https://cinemore.jp/jp/erudition/2775/article_2777_p3.html#a2777_p3_2 )でも述べたように、単なる高精細CGではなく、物理現象そのものを再現するシミュレーション技術による所が大きい。


 特に『WoW』でも『FaA』でも、多くのシーンを占める海の表現は重要だ。この二作の世界観において、水は単なる背景ではなく、物語と感情を支える“環境そのもの”として機能しているからだ。このためにWētā FX社は、水だけでなく、煙、布、髪、筋肉など様々な素材を扱える、統合ソルバーの「Loki」を開発している。このLokiは、物理的に正確であることは当然として、水が髪を揺らすといった、異なる素材間の相互作用計算も可能にした。


 そして同時に「Pahi」も開発している。Lokiが“物理計算エンジン”だとすれば、Pahiは“統合パイプライン”(水の現象を統合的に管理する仕組み)と言える。つまり、水に関連するあらゆる現象を扱うツールセットであり、その密度や状態によって「FLIP」と「SPH」という2つのシミュレーションが切り替わる。


 具体的には、まず大きなうねりや、どっしりとした水の表現を得意とするFLIPで、海全体の動きを計算する。専門的に言うと粒子法と格子法という、二種類の数値解析手法を組み合わせて、水の大規模な動きを求めている。


 そして、波が激しくぶつかったと判断されると、自動的にSPH(粒子法)の計算に切り替わって、水と空気の境界が泡立ち、水面の薄い膜が破れ、水しぶきが舞い上がる。さらに、飛沫の粒子がより細かくなって空中に舞うと、煙のようなミストとしてボリュームレンダリングに引き継ぐ流れだ。加えてPahiは、水中の粒子や泡の計算も担当している。




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