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『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』を生み出した映像革命とは?その最新技術に迫る(後編)

(C) 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』を生み出した映像革命とは?その最新技術に迫る(後編)

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奥行き感とサイズ感の関係



 こういった新たな機材開発によって、『WoW』には無理な視差を感じるショットは皆無となった。普段、肉眼で見ているような空間が、そっくり再現されているような自然さなのである。ちなみに、「飛び出しではなく、奥行きのある3Dだ」という評がよく見られる。正直「未だにそういう認識なのか…」と思ってしまうが、そもそも3D映像が画面から飛び出してこられるのは、スクリーンの4つの角と両眼を結んだ、2つのピラミッドが交わっている空間内だけだ。


 3D映像は、単に「被写体の距離感」だけではなく、「被写体の大きさ」がリアルサイズとして感じられる。だから、人物を無理に目から近い位置に配置すると、小人に見えてしまう。同じく巨大な宇宙船も、すぐ近くに寄ってくればオモチャになってしまうのだ。従って観客の間近まで接近が許されるのは、矢の先端や、銃弾、火花、爆発の破片など、小さいものに限られる。そういう意味では前述のように、海中の小生物が群れているシーンなどは3D表現に最適だ。


 逆に被写体をスクリーンの奥に設定すれば、世界は広く雄大に、宇宙船や戦艦などの物体は威圧的に感じられる。この巨大感は、スクリーンのサイズが大きくなるほど顕著になるため、ドルビーシネマやIMAXレーザーの劇場では、より効果的になる。



『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(C) 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.


Wētā FXのシミュレーション技術



 前編で述べたように『WoW』では、いかに海をリアルかつ美しく表現するかに作品の生命が掛かっている。とりわけ重要になるのが、水の正確な挙動を表現する流体シミュレーション技術だ。これは、WetaデジタルからWētā FX(2022年3月14日からの名称)にかけて、長年ヘッド・オブ・FXを務めてきたジョナサン・ニクソンの担当だった。彼は、ソルバー(数値計算を実行して流体力学の方程式を解くプログラム)の大幅な改良に取り組み、実際の映像と比較しながら、かつてなくリアルな描写を成功させた。


 それは海の波の挙動(沖合と海岸の違い、天候条件による違い、船舶が起こす波、爆発による波など)、海面に降る雨の波紋、ナヴィたちの肌を伝って雨滴が流れていく様子、森の中の小川、水に飛び込んだ時に発生する泡、水中爆発の泡、海藻やプランクトンの揺れ、海底に舞い上がる土煙…などなど、どれも細かい所まで繊細に描写され、一瞬たりとも不自然さを感じさせない。


 さらに流体シミュレーションで驚かされたのが、炎の表現だ。映画の冒頭近く、地球からやって来たRDAの巨大輸送機スリングロードの着陸シーンだ。逆噴射の炎が津波のように禍々しく拡がって行き、パンドラの森を次々と地獄に変えていく。その業火の後には焼けた木立だけが残り、火の粉や灰が舞っている。この映像も実際に燃焼実験を繰り返し、正確にシミュレーションされたものだ。



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