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『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』を生み出した映像革命とは?その最新技術に迫る(後編)

(C) 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.

『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』を生み出した映像革命とは?その最新技術に迫る(後編)

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Wētā FXのレンダリング技術



 またそのリアリティは、レンダリング技術の大幅な改良による所も大きい。それを実現させたのが、Wetaデジタルが開発した、MANUKAと呼ばれる物理ベースのレイ・トレーサーだ。以前は他のVFXプロダクションと同じく、ピクサー・アニメーション・スタジオが開発・販売しているRenderManを使っていた。だが、リアルな生物の表現などには機能不足だという声が大きく、自社開発を進めて『ホビット 決戦のゆくえ』(14)から使用を開始し、『猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)』以降全面的に用いるようになった。


 MANUKAの特徴は、光をRGBで計算するのではなく、波長のスペクトルで求めていることだ。これによって皮膚の色も、従来のサブ・サーフェイス・スキャタリング(表面下散乱)ではなく、色素による吸収量の違いとして求められ、ナヴィたちの青い肌の質感や、海中の半透明な無脊椎動物などを自然に表現することに成功した。また、撮影監督が実写撮影時に用いた照明を記録し、イメージベースでCGをライティングするPhysLightもある。そして球面調和関数を用い、数値計算の高速化やデータ量の大幅な圧縮を実現させている。作業手順としては、やはり自社開発のリアルタイム・レンダラーであるGazeboでテストし、OKが出た段階で高解像度画像をMANUKAでレンダリングする。



『アバター:ウェイ・オブ・ウォーター』(C) 2022 20th Century Studios. All Rights Reserved.


 さらにコンポジット技術においても、Deep compositingというテクニックを開発している。これは、ピクセル毎にカラー情報や、カメラからの相対深度、透明度などの、複数のサンプルを持たせることで、水や炎のような半透明のエレメント、さらに雲や煙などボリュームレンダリングした物体のコンポジットを、再レンダリングせずに後から調整できる技術だ。従来のコンポジット手法に比べてデータ量はかなり重くなるが、柔軟性と操作性を大きく向上させた。このように『WoW』には、13年間の技術的進歩が確実に詰まっている。




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