“いいこ”という違和感と苦痛からの脱却
タイトルの「グッドワン」は「いいこ」という意味だという。幼い子供であればそれは行儀が良かったり、聞き分けが良かったり、頭脳明晰であることなどの褒め言葉となろう。だが、歳を重ねて自意識が育つにつれ、そう呼ばれることはむしろ違和感と苦痛に変わり、場合によっては自分が従順に飼い慣らされているように感じるケースも少なくない。
主人公サムは非常に明晰な少女で、相手が何を言わんとしているのかすぐに察知するし、無責任で勝手気ままな他の二人と違って、第三者がどう感じるかをしっかりイメージできる目線を持っている。この歳になってもキャンプに同行してくれるなんて奇跡に近いが、おそらく彼ら父娘にはこういった休日の過ごし方が昔から当たり前になっているのだろう。

『グッドワン』©2024 Hey Bear LLC.
だが、今回の体験はいつもと全く違うものになる。決定的な一瞬は、あまりにもさりげなく忍び寄る。マットが口にした一言を震源に、彼女の顔いっぱいに広がっていく怪訝な感情。さらにこの件について父親に打ち明けた際のリアクションにも、彼女は「裏切られた」という強い思いを抑えることができない。
ここで交わされた言葉を #MeToo などの観点で検証することも可能だろう。しかし本作の着想された背景を紐解くと、決してそれだけに留まらない人間関係と内面世界を併せ持った作品であることに気づかされる。何より我々の目に明らかなのは、89分間の行程を通じてサムが大人たちが思い描く「いいこ」の枠組みから別の何者かへと孵化して解き放たれようとしていること。かくなるサムの成長の一歩を、雄大な自然が静かに称えているかのようだ。