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『グッドワン』さりげない描写の中に人生における大切な瞬間が刻まれる

©2024 Hey Bear LLC.

『グッドワン』さりげない描写の中に人生における大切な瞬間が刻まれる

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コロナ禍での体験や出産がもたらしたもの



 高名な映画監督ロジャー(『ダンテズ・ピーク』/97『スピーシーズ 種の起源』/95『世界最速のインディアン』/05など)を父に持つ娘インディア・ドナルドソン監督は、これまでにも『Medusa』(18)『Hannahs』(19)『If Found』(21)という短編を通じて、女性の感性と目線を、忘れ難く柔らかなタッチで紡いできた才能だ。今回の『グッドワン』(24)が長編デビュー作となる。


 そんな彼女に本作のインスピレーションを与えたのはコロナ禍だったとか。この時、インディアは父ロジャーとその3番目の妻、さらには歳の離れた高校生のきょうだいたちと長期にわたって一緒に暮らしていた。


 ティーンエージャーという多感な時期ゆえ、本来なら同年代の若者同士で直に触れ合って交流したいはず。それなのに彼らは限定された空間での息苦しい生活を余儀なくされている。これは過酷だ。しかしその一方、彼らはこのような環境下であっても、デジタル機器を駆使して友人たちとコミュニケーションを取り合い、自らがありのままでいられる空間を生み出している。こういった新世代の感覚がインディアにもたらした気づきは大きかった。



『グッドワン』©2024 Hey Bear LLC.


 また、彼女は本作を撮影するまでの間に出産を経験した。その後、子育てに追われる中で、自分を育ててくれた親の感情に思いを馳せることも多くなったという。そして胸のうちによぎるのは、いつかこの幼子も成長し、親が決して完璧な存在ではないことに気づき、たとえ最善を尽くしたとしても、自分はこの子をたびたび失望させてしまうのだろう、ということ。それでもなお、親子は互いにやりとりしながら関係を維持していかねばならないーー。


 かくも子供と親、双方への共感の目線があったからこそ、カメラの向こう側のインディアはサムの主観を大切に描きつつ、さらに状況をワイドに広げて、時に頑なで、融通が効かず、想像力の欠けた大人たちの心境にも心を寄せることができたのだろう。




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