2026.03.09
※本記事は物語の詳細に触れているため、映画未見の方はご注意ください。
『ウィキッド 永遠の約束』あらすじ
オズの国に隠された真実を知り、それぞれの道を歩むことになったエルファバとグリンダ。“悪い魔女”として悪名を着せられ民衆の敵となったエルファバは、言葉を奪われた動物たちの自由のために戦い続けていた。一方“善い魔女”となったグリンダは、希望の象徴として名声と人気を手にするも、その心にはエルファバとの決別が深い影を落としていた。和解を試みるもその願いは届かず、 ふたりの溝はさらに深まっていく。さらに、突如現れた“カンザスから来た少女”によって、オズの国の運命も大きく動き出す。世界に暗雲が立ち込める中、ふたりの魔女はもう一度、かけがえのないかつての友と向き合わなければならない。自分自身と、世界そのものを―――永遠に変えるために。
Index
オリジナル舞台の2倍近い長さの狙い
ミュージカルの舞台が映画化される場合、その多くが1本の作品として完結される。ブロードウェイやウエストエンド(ロンドン)発の、いわゆる商業ミュージカルは、インターミッションを除けば、だいたい2時間半程度の長さ。つまり一般的な映画の尺に収まる分量である。
過去にさかのぼって名作ミュージカルの長さを確認すると、『ウエスト・サイド物語』(61)2時間32分(2021年のスピルバーグ版も2時間36分)、『サウンド・オブ・ミュージック』(65)2時間54分、『シカゴ』(02)1時間53分、『オペラ座の怪人』(04)2時間23分、『レ・ミゼラブル』(12)2時間38分と、一部を除いて舞台で上演されるケースの平均値に近くなっている。
オリジナルが名作であればあるほど、映画化にはある程度の忠実さが求められるのだろう。そこに映画的な見せ方をどこまで付加し、別次元へ導きことができるか。舞台での演出では難しい、ロケ地撮影によるスケール感や美しさ、俳優のクローズアップなどによって映画化の“意味”を伝えられれば、成功例の仲間入りを果たす。

『ウィキッド 永遠の約束』© Universal Studios. All Rights Reserved.
そんな過去の例に比べ、「ウィキッド」は特殊なパターンとなった。オリジナルの舞台の長さは約2時間40分。しかし前後編で作られた映画は、前編の『ウィキッド ふたりの魔女』(24)だけで、舞台と同じ2時間40分。後編の『ウィキッド 永遠の約束』(25)が2時間17分なので、合わせると5時間弱の長さとなる。そこには舞台版も手がけたプロデューサーのマーク・プラットの思いが関係しており、この映画版では舞台版で描ききれなかったドラマを追加したかったという。
メインキャラクターであるエルファバの幼少期など、映画版で追加された要素によって、たしかに作品の軸となる善と悪が混沌とするテーマが深みを増し、エルファバとグリンダの関係性が掘り下げられることになった。曲と曲の間のドラマ部分が、映画によって濃密にエモーショナルに迫ってくるのは、プラット、および監督のジョン・M・チュウの狙いどおりだ。
前後編の公開に1年のインターバルを設けたのは一種の賭けであったが、『ふたりの魔女』で、エルファバが「ディファイング・グラヴィティ」を歌い上げながら飛翔する壮大かつ、劇的なラストの狂おしいまでの余韻は、1年間の渇望を持続するのに十分だった。