爆発というダンス
「アメリカこそがこの映画の主人公だ」(ミケランジェロ・アントニオーニ)*
線や形、色彩へのこだわり。アントニオーニは画家のように映画を作る。実際、撮影現場のアントニオーニは、アトリエにいる画家のように、何かを試しては、考え直し、また少し変えるのだという。方向感覚を狂わせるような画作りは、アントニオーニの故郷フェラーラに縁のあるジョルジュ・デ・キリコの絵画作品に通じるものがある。元々アントニオーニは絵を描いており、『赤い砂漠』で色彩に向き立って以降、再び絵画を描き始めたという。ジャクソン・ポロックや抽象絵画を好むアントニオーニにとって、ザブリスキー・ポイントは理想の地だったことだろう。

『砂丘』©2026 WBEI
マークとダリアは砂丘の傾斜を駆け下りる。砂丘を滑るように駆け下りていくマークを背後から捉えた超ロングショットが素晴らしい。マークは風景の向こう側へと消えていく。ザブリスキー・ポイントは風と水によって数百万年かけて作られた地形だ。マークとダリアは古代の亡霊たちを呼び寄せる。肌の色や線と形、風景が溶け合い、人間というよりも別の動物になって愛し合う。肉体と肉体が色や形を失う。このときザブリスキー・ポイントは、バニシング・ポイントとなる。原始的な風景であり、月面のように未来的な風景でもある。このシーンのエキストラは、当時アントニオーニが興味を示していたオープンシアターの劇団俳優たちによって演じられている。ダリアの健康的な肌の色が、砂丘と見事に溶け合っている。彼女は初めから野生の魔女であり、月面の巫女だった。
そして『砂丘』という作品を代表する爆発のダンスが起こる。アントニオーニによる“アクション・ペインティング”。爆発の色彩とリズム。ポップアートのようなビルボード広告が並ぶロサンゼルスの街並みが、アメリカへの称賛と皮肉の両義性を表わしていたように、爆発もまたこの国への称賛であり皮肉の祝祭である。まさしく「アメリカこそがこの映画の主人公」となる。この映画は世界中を魅了してきたアメリカの文化が持つ可能性を、発光のラストダンスとしてフィルムにペイントしている。
*[Film Comment, September 1992]
映画批評。「レオス・カラックス 映画を彷徨うひと」、ユリイカ「ウェス・アンダーソン特集」、リアルサウンド、装苑、otocoto、松本俊夫特集パンフレット等に論評を寄稿。
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『砂丘』
全国順次上映中
配給:コピアポア・フィルム
©2026 WBEI