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『ザ・ブライド!』天才女性作家の呪詛が生み出す異形のファンタジー
ジェシー・バックリーがひとりの身体であらゆる女性を体現
『ザ・ブライド!』の冒頭で、メアリー・シェリーは新たな主人公“ザ・ブライド”(ジェシー・バックリーの二役)を物語に迎え入れる。小説「フランケンシュタイン」では生まれる前に廃棄されてしまった“フランケンシュタインの怪物の花嫁”の復活である。
象徴的なのが、ブライドが複数のペルソナがこんがらがった状態であること。生前はアイダという若いエスコートガール(ジェシー・バックリーの三役目といえる)だったのだが、別次元の存在であるメアリー・シェリーの介入によって、世の中の悪徳にうんざりしていた内なる声が、まるで二重人格のように噴出するのだ。さらにメアリーの人格も紛れ込み、二人羽織ならぬ三人羽織状態なのが不気味でありつつも可笑しい。

『ザ・ブライド!』©2026 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.
しかし口は災いのもととなり、ギャングに殺害されて埋葬され、さらに墓場から掘り起こされて、怪物(クリスチャン・ベール)とユーフォロニウス博士(アネット・ベニング)によって“花嫁”として蘇る。そのときにはアイーダという人格は忘れ去られ、記憶のない白紙状態になっている。こうなるともはや三人羽織どころでは収まらない。彼女はすべての女性の依り代となり、欲望のおもむくままに暴れまわることで、自由を求める女性たちの反抗の象徴となっていく。
ブライドはある意味で『ジョーカー』(19)のアーサー・フレックにも似ている。ただし庶民のネガティブな不満を煽って自己実現と社会からの承認を求めたアーサーと違って、ブライドには「自由に生きる」というピュアでシンプルな欲求しかない。だからこそアクセルを踏み抜くような彼女の暴走が痛快に感じられるのだろう。