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『ザ・ブライド!』天才女性作家の呪詛が生み出す異形のファンタジー

©2026 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

『ザ・ブライド!』天才女性作家の呪詛が生み出す異形のファンタジー

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さまざまな時代のカルチャーを駆け抜けるカオスな時間



 前述した通り、怪物の花嫁は原作小説では誕生すらもさせてもらえないし、『フランケンシュタインの花嫁』では言葉を発することもなく、怪物を拒絶したまま炎とともに消えていった。監督のギレンホールは、そんな不遇の花嫁に新たな命と声を与えて1930年代のアメリカに解き放つ。


 本作の痛快さは、悪徳にまみれた1930年代のアメリカを駆け抜けていくブライドとフランクを描きながら、時代考証はかなぐり捨てて、1950年代のビートニクムーブメントから1970年代のパンクロック、そしてアメリカンニューシネマまで、反骨精神を宿したさまざまなカルチャーも駆け抜けていくこと。なんたる貪欲さ。しかも女性を添え物にしてきたそれぞれのカルチャーの限界を次々と突破していく様には、「自分たちが負の歴史を書き換えてやる!」というギレンホールの気概と野心が満ち満ちている。



『ザ・ブライド!』©2026 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.


 とはいえ「女性VS男性」といった単純な対立軸の話ではない。フランクもまた重要な役割を担っており、ブライドと旅する中で原作に由来する生来の善良さを取り戻し、他者との関わりも学んでいく。本作は、自分を蝕んでいた疎外感と向き合うフランクの物語でもあるのだ。


 ただしそれでもなお、『ザ・ブライド!』は「女性の女性による女性のための映画」である。ブライドは劇中で何度も「I would prefer not to(私はそうはしたくない)」と言って、誰かの願いや要請や命令を拒絶する。あらゆるルールから逸脱しているようなブライドが発する上品な物言いは、ある種の可笑しみを感じさせるが、“自由”とは好き勝手にやりたい放題を尽くすことよりも、やりたくないことに毅然と「ノー」と言える主体性のことではないかと気付かされる。


 この映画は楽しく愉快に怒っている。いささか背景を把握するハードルが高い部分はあるとは思うが、怒りをポジティブなエンタテインメントへと昇華させ、疎外感を抱えるあらゆる人に伴走してくれる冒険譚であり、絶対にどハマリしたり救われたりする人がいるはずと信じているので、どうかこのカオスな時間に飛び込んでみていただきたい。



文:村山章

1971年生まれ。雑誌、新聞、映画サイトなどに記事を執筆。配信系作品のレビューサイト「ShortCuts」代表。




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『ザ・ブライド!』

大ヒット上映中

■配給:東和ピクチャーズ 東宝

©2026 Warner Bros. Entertainment Inc. All Rights Reserved.

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