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『これって生きてる?』ブラッドリー・クーパー監督が、親密な目線でコンパクトに紡ぐ人間ドラマの快作
目指すべき場所を象徴する楽曲
これは主人公の何らかの成功やハッピーエンドを描いた物語ではない。元ネタのジョン・ビショップのようにコメディアンとして大成するわけでもなければ、アレックス&テスがこれから良好な関係を築いていけるのかどうかもわからない。ただ、わかるのは二人が時折つまずきながらも、今この瞬間、精一杯に向き合おうとしていることだ。
そして、両親の離婚に胸を痛めつつも屈託のない表情を浮かべる幼い子供たちもこの映画の肝だ。彼らはいつも天使のように愛おしく、作品を暗闇ではなく、より明るい場所へといざなう。
特に中盤以降、子供らが楽器の練習に打ち込む時、印象的なフレーズが響くたびに本作には何やら心地よい日差しが差し込みはじめる。それがやがてクイーン&デヴィッド・ボウイの「アンダー・プレッシャー」へと行き着く流れは、誰しもを笑顔にさせる最高の展望といえるだろう。

『これって生きてる?』©2026 Searchlight Pictures. All Rights Reserved.
もともとの脚本ではここでジャーニーの「ドント・ストップ・ビリーヴィン」が使用される予定だったとか。しかし「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」(99〜07)の最終話ラストでの印象がぬぐいきれないこともあり、クーパーがどうしようか迷っていたところ、ローラ・ダーンが「アンダー・プレッシャー」の動画(エディー・ヴェダーとベン・ハーパーが歌うライブバージョンだったとか)を見せてくれたことで全てがカチッとハマったという。
ご存知の通り、ボウイとマーキュリーは声質が全く異なる。でもこれらが相反するかと思えば、その実、両者の歌声は見事なまでに調和し、聴く者、観る者を大いに沸かせ、颯爽とした風を吹かせてくれる。
それは本作の要となるアレックス&テスにとっての理想的な姿であり、我々が目指すべき社会や人間関係の象徴とさえいえるのかもしれない。高らかに個を奏で合う本作にとって、これほどふさわしい締めくくりかたは他にない。
芸術、パフォーマンス、ショービジネス、そして「音楽」という要素が密に関わってくるところも、従来のクーパー作品と同様だ。ただしその扱い方は手のひらで包み込めるほどコンパクトで親密。このサイズ感ならではの、クーパーの挑戦とその成果が十分に詰まった快作といえるだろう。
参考資料:
https://www.slantmagazine.com/film/will-arnett-laura-dern-interview-is-this-thing-on/
『これって生きてる?』プレス資料
1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンII』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。
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配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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