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『ARCO/アルコ』設定の異なる“2つの未来”を描いた、グラフィカルな傑作アニメーション

©2025 Remembers / mountainA / France 3 CINEMA

『ARCO/アルコ』設定の異なる“2つの未来”を描いた、グラフィカルな傑作アニメーション

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設定の異なる“2つの未来”



 本作のストーリー部分で最も特徴的なのは、設定の異なる“2つの未来”が舞台となっている点だろう。西暦2932年に生きる10歳の少年アルコが、タイムトラベルという未来のテクノロジーを利用してたどり着くのが、西暦2075年の世界なのだ。しかし、2075年は気候変動によって荒廃が進んだ過酷な環境にあった。この停滞した近未来で両親と離れて生活している少女イリスは、先の未来から不時着した少年・アルコと出会い、彼を本来の居場所である未来へと帰すための方法を探し始めるのである。この、数百年を隔てた2人の子どもたちの交流と奮闘が、物語を動かしていく。


 これら2つの未来の描写は、作品のテーマの根幹にかかわっている。現在から900年以上も先の世界である2932年は、テクノロジーに完全に支配された冷徹な社会かと思いきや、意外にも血の通った生活感が漂っていると感じられる。人々は巨大な人工のツリーに居住し、自在にタイムトラベルを楽しみながら、居住スペースでは植物に囲まれ、鶏を飼うなどといった、かつての人類が営んでいた、アナログな暮らしに立ち戻っている部分があるのだ。



『ARCO/アルコ』©2025 Remembers / mountainA / France 3 CINEMA


 これに対し、われわれの時代の延長線上にあるといえる2075年は、寒々しい印象がある。イリスは両親と物理的に引き離されて暮らし、食卓の団欒はプロジェクターが映し出す実体のない映像によって演出され、子どもの世話はAIを搭載した子育てロボットがこなしている。むしろ、ここではロボットの方が、ある意味で情が厚く人間味があるように描かれているのではないだろうか。こうした描写は、コロナ禍を経た現代社会の象徴だとも考えられる。


 本作の制作時、スタジオのアニメーターたちは、リモートワークを希望したのだという。しかし、ビアンヴニュ監督は同じ時間、同じ空間を共有することの重要性を説き、スタッフをあえてスタジオに集めて制作を続けたという。こうした監督自身の現場主義的な思想は、劇中の2075年が抱える空虚さと、それに対峙する子どもたちの触れ合い、そして物語が最終的に到達する、他者と繋がることへの希望や、“ものを生み出すことの意義”というメッセージと共鳴しているのである。





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