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『サンキュー、チャック』スティーヴン・キングが問う、人生の価値とは ※注!ネタバレ含みます
2026.05.11
世界が崩壊しかける中、突如現れた謎の広告
物語の舞台となるのは、大地震や津波、洪水といった自然災害が相次ぎ、世界規模でインターネット網が機能不全に陥るなど、日常が音を立てて崩壊し始めた世界である。キウェテル・イジョフォー演じる教師のマーティは、この理不尽なかたちで強制的に終わりゆく世界のなか、ただたじろぎ、翻弄されていくしかない。
インターネットもインフラも遮断される状況下で、不気味な現象が起きる。街頭の看板やテレビ、ラジオに突如として「チャールズ・クランツに感謝します。素晴らしい39年間に、ありがとう、チャック」という、謎めいた広告が大量に出現し始めるのだ。

『サンキュー、チャック』© 2024 DANCE ANYWAY, LLC. ALL RIGHTS RESERVED.
東日本大震災時に被災し、地震の強力な揺れや、インフラが止まった状態を長く経験している筆者は、いまも予断を許さない状況が続く福島の原発事故の危機があるなか、やっと繋がったTVに、ACジャパンのCM「あいさつの魔法。」が延々と流れるのを目にした。その「ぽぽぽぽーん」という明るい声とともにゆるふわなキャラが笑い合う呑気さに、シュールな思いを抱いたことを鮮明に覚えている。まさにマーティは、そうした奇妙で不気味な状況に直面していたのだろう。
マーティは、いよいよ日常が崩壊し、全てが終わろうとするなか、元妻のフェリシア(カレン・ギラン)に会うため、崩壊しつつある街へと家を飛び出していく。映画はここから、謎の人物“チャック”の視点へと切り替わり、第二章、第一章と、彼の歩んできた人生をさかのぼる物語へと移行していくのである。