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『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』血の宿命を超えた、現代のスター・ウォーズ神話 ※注!ネタバレ含みます
2026.06.01
反復される「継承」のドラマ
この「父と子の継承」というテーマは、ロッタ・ザ・ハットというキャラクターにも鮮やかに反復されている。偉大な犯罪王ジャバ・ザ・ハットの息子として生まれ、父の威光と自らのアイデンティティの間で葛藤する姿は、ジャリンとグローグーの「自ら選び取った絆」と明確な対照をなす存在だ。ジョン・ファヴロー監督がロッタを『クリード チャンプを継ぐ男』(15)のアドニス・クリードに例えているように(*1)、彼もまた、偉大な父の影の中で生き、己を証明しようともがく若者なのである。
ロッタの声を演じたジェレミー・アレン・ホワイトのキャリアを紐解けば、このキャスティングがいかに深い説得力を与えているかがわかる。『アイアンクロー』(23)や『スプリングスティーン 孤独のハイウェイ』(25)で彼が体現してきたのは、圧倒的な父親の重圧と戦い、己を証明しようともがく息子の姿だった。ホワイトの声に宿る悲哀は、ジャリンという父親の背中を見つめ、やがてそれを自らの足で乗り越えようとするグローグーの成長譚と、見事なまでの共鳴を果たしている。

『スター・ウォーズ/マンダロリアン・アンド・グローグー』(C)2026 Lucasfilm Ltd. & TM. All Rights Reserved.
何よりこの継承のドラマは、現実のルーカスフィルムの歴史そのものとも地続きだ。ジョージ・ルーカスという唯一無二の創造主がゼロから生み出した神話は、ルーカスフィルム社長のキャスリーン・ケネディへと託され、さらに本作の共同脚本・製作を担い、CCO(チーフ・クリエイティブ・オフィサー)となったデイブ・フィローニへと引き継がれた。かつてルーカスの背中を見つめ、レガシーの重圧と向き合ってきたフィローニが、いま自らの手で新たな時代を紡ぎ出そうとしている。
グローグーが操縦桿を握るあのラストシーンは、創造主の遺産をただ守るだけでなく、それを新たな世代へと手渡し、未来へと向かわせようとする、現在のクリエイターたちの偽らざる決意そのもの。ケネディは本作を、過去の予備知識なしに楽しめる「新たな世代にとっての、彼らのスター・ウォーズ」と語った(*2)。初めて見る宇宙の景色に目を輝かせ、自ら未来への舵を切るグローグーの姿は、これからスクリーンで初めてこの神話に出会う、現実世界の新しい子供たちの姿とも重なり合う。
『マンダロリアン&グローグー』は、子が父の背中を見つめ、やがてそれを受け継ぎ、乗り越えていくという普遍の神話を、疑似家族のドラマとして見事に構築してみせた。エンドロールが流れるとき我々の胸に残るのは、壮大な銀河の英雄譚としての興奮ではなく、血縁という宿命を超えて目の前の大切な人を守り抜こうとする絆がもたらす、温かな余韻なのである。
(*2)https://deadline.com/2025/02/kathleen-kennedy-clarifies-lucasfilm-exit-star-wars-future-1236304421/
文:竹島ルイ
映画・音楽・TVを主戦場とする、ポップカルチャー系ライター。WEBマガジン「POP MASTER」(http://popmaster.jp/)主宰。
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