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『遊星からの物体X』はカーペンターの〈黙示録〉トリロジー第一作だった!※注!ネタバレ含みます。

『遊星からの物体X』はカーペンターの〈黙示録〉トリロジー第一作だった!※注!ネタバレ含みます。


観客の心に刺さったままの「疑心暗鬼」



 物語のクライマックス、基地を爆破したマクレディとチャイルズの2人だけが雪原に取り残される。2人はここに及んでもまだ、相手が物体Xではないかという疑念にとらわれている。しかしマクレディは最後にこうつぶやく。


「まあ、待ってみよう。そのうちわかるさ」


 画面がフェードアウトし映画は終わる。2人の生死は曖昧にされ、人類が滅亡するかどうかは、明確に示されない。このラストでは、ヘリコプターが救出に現れるという案もあったがカーペンターは却下した。


「この映画は曖昧にダークに終わるべきなんだ」


 カーペンターは疑心暗鬼という「棘」を観客の心に残すことを決断したのだ。結局彼は何を言わんとしたのか?孤立した人間存在が世界の終りへの扉を開ける、だからお互いを信じよう、というメッセージなのか?真意は本人に聞かなければ分からないが、想像することはできる。そもそも「ヨハネの黙示録」は世界の終末を描きながら、同時にその先の新たな世界秩序の誕生をも描いている。つまり、カーペンターは世界の終りに悲観的なだけのイメージを抱いていないのかも知れない。




 『遊星からの物体X』に主演したカート・ラッセルは、後に『エスケープ・フロム・LA』で再びカーペンターとタッグを組む。そのラスト、ラッセル演じる主人公スネークは文明が崩壊したであろう暗闇の中で煙草に火をつけ、満足そうにつぶやく「人間に戻ったぜ…」。


カーペンターは、我々がよって立つところの社会や文明に対する破壊衝動=「疑心暗鬼」を隠さない。その先に彼は何らかの光明を見出しているのかもしれない。


 「遊星からの物体X」は1982年に公開され、満足な興業成績をあげられず、批評家たちからはさんざん酷評された。2週間前に公開された『 E.T』が大ヒットしていたことが大きな要因だったとも言われる。カーペンターは映画監督としてのキャリアが終わったと絶望し打ちのめされた。しかし、彼はその後もこの世の終わりを描く黙示録映画を撮り続け、世界への「疑心暗鬼」を表明し続けている。


文: 稲垣哲也

TVディレクター。マンガや映画のクリエイターの妄執を描くドキュメンタリー企画の実現が個人的テーマ。過去に演出した番組には『劇画ゴッドファーザー マンガに革命を起こした男』(WOWOW)『たけし誕生 オイラの師匠と浅草』(NHK)など。現在、ある著名マンガ家のドキュメンタリーを企画中。


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『遊星からの物体X <デジタル・リマスター版>』

丸の内ピカデリーほか全国順次公開中

(c)1982 UNIVERSAL CITY STUDIOS, INC. ALL RIGHTS RESERVED

公式サイト: http://thething2018.jp/


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