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『恐怖の報酬』天才ウィリアム・フリードキンの最高傑作にして悲運の作品

『恐怖の報酬』天才ウィリアム・フリードキンの最高傑作にして悲運の作品

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ドキュメンタリーで培ったノウハウで作り上げるリアリズム



 フリードキンはまず、脚本にウォロン・グリーンの参加を要請。彼はペキンパーの傑作『ワイルド・バンチ』(69)の脚本に携わった経験をもち、さらに監督を務めた疑似ドキュメンタリー『大自然の闘争/驚異の昆虫世界』(71)はアカデミー賞で長編ドキュメンタリー賞を獲得していた。ドキュメンタリー畑出身のフリードキンと馬があったにちがいない。


 彼らは脚本執筆にあたりジャングルを舞台にしたデヴィッド・リーン監督の『戦場にかける橋』(57)を参考にしたという。しかもフリードキンはリーン本人にまで意見を求めに押しかけた。そこでリーンは今自分がもう一度『戦場にかける橋』を撮るとしたらセリフを3分の1にすると語ったという。この言葉に触発されたフリードキンは極限までセリフをそぎ落とし、映像によって物語を紡ぐことを実践していく。


 冒頭、4人の男それぞれの、南米に逃走する事情は描くシーンはセリフをほとんど排すことで迫真性を増し、まるで記録映像を見るかのような興奮に満ちている。フリードキンは出世作の『フレンチ・コネクション』で薄汚れ、ゴミだらけのニューヨークを包み隠さず観客に見せつけ衝撃を与えたが、『恐怖の報酬』では南米のジャングルに囲われた村をドキュメントタッチで描写した。観客はセットではない(実際はセットだが)その村に自分が主人公たちと一緒に迷いこんだかのような感覚を覚える。熱帯の瘴気とジャングルの緑が混然となって、主人公と観客たちの心に入り込んでくる魔術的な効果を生み出す。


 そしてなんといっても圧巻は、映画史に残る大吊り橋のシーンだろう。濁流にかかる吊り橋を巨大なトラックが今にも転落しそうになりながら、猛獣のごとき咆哮を轟かせ渡ろうと身もだえする。ねじ切れそうなほどに揺れる吊り橋を、死に物狂いで渡るトラックの姿は、運命に翻弄される男たちの人生そのものを暗喩している。




 この橋の建設には300万ドルが費やされ、トラックは撮影中に計5回も川に転落したという。フリードキンは撮影中何度も「この映画は呪われている」と絶望したというが、およそ2年の制作期間を費やし、映画は完成した。



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