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Netflixシリーズ「ガス人間」現代社会の病理を真っ向から撃ち抜いたネオ・ノワール、そして悲恋の物語 ※注!ネタバレ含みます

Netflixシリーズ「ガス人間」

Netflixシリーズ「ガス人間」現代社会の病理を真っ向から撃ち抜いたネオ・ノワール、そして悲恋の物語 ※注!ネタバレ含みます

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特権階級への下剋上とカタルシス



 熱血刑事の岡本(小栗旬)、JNT放送局記者の甲野(蒼井優)、暴力団組長の大友(中野英雄)、上場企業社長の森(竹野内豊)。ガス人間を巡って、警察、メディア、裏社会、権力者によって繰り広げられる四つ巴のドラマ。「恐怖地帯」というチャンネルで事件を配信する富士太(林遣都)と華歩(広瀬すず)の存在が、この群像劇をさらに混沌へと引きずり込んでいく。


 この血で血を洗う狂騒の根底に横たわっているのが、本作の真の恐怖とも言える巨大な搾取システムだ。劇中、佐野教授(モーリー・ロバートソン)が「動植物由来の有機物である資源、自宅から出る生ごみ、街の下水道から出る汚れ、これらを直接燃料として燃やすこともあれば、バイオマス化して発電したりもします」と語るシーンがあるが、この効率主義のロジックは、最下層の人間をそのまま資源として消費していいという、権力者たちの傲慢な発想へと直結していく。


 甲野がつぶやく「人は不安に陥ると、より安定を望む」というセリフは、社会の恐怖を煽ることで自己の権力を盤石にせんとする、支配層のグロテスクな真理を鋭く突いている。本作における真の怪物は、現実の社会システムそのものなのだ。



Netflixシリーズ「ガス人間」


 片山監督は、そこに「空間」と「重力」の演出をまぶしていく。特権階級は高層階にふんぞり返り、弱者は地下の施設や廃倉庫に押し込められている。まさに息苦しい垂直社会(縦社会)のヒエラルキーだ。


 しかしガスという物質は、重力を完全に無視して這うように広がり、地の底から上層部へと這い上がっていく。まさしく、物理的な壁を築く権力者たちへの下克上。虐げられた者たちの怒りが縦社会を侵食する、強烈な映像的カタルシスを生み出している。


 映像面での細やかな視覚表現も光る。エンストしたタクシーから立ち上る煙や、何気ないタバコの紫煙など、ガス人間が直接画面に登場していなくても、日常風景のなかに漂う煙が常に彼の存在を予感させる。さらに、違法賭博がなぜか「すっぽんルーレット」という珍妙な設定になっているなど、日本のようで日本ではないような無国籍な手触りは、ヨン・サンホと片山監督の感覚がミックスされた化学反応だろう。


 シリアスな展開の合間に突如として爆発する、シュールなユーモアセンスもたまらない。ガス人間から襲撃されている真っ只中、ヤクザが必死に車の窓が防弾ガラスかどうかを確認し合うコミカル芝居。横転して宙を舞う大友の車をバックに、女性たちが片手を伸ばしてヨガのポーズをとる狂気の構図。


 ボウリングでストライクを取った吉田刑事(こばやし元樹)が披露する、謎のダンス。なぜかタータンチェック柄のスカートをはいて登場する、ゴロ監督(高嶋政宏)。そして、ホストのケンタ(賀来賢人)のやりすぎ芝居。緊張と緩和の奇妙なバランスが観る者を強烈に惹きつける。





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