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Netflixシリーズ「ガス人間」現代社会の病理を真っ向から撃ち抜いたネオ・ノワール、そして悲恋の物語 ※注!ネタバレ含みます

Netflixシリーズ「ガス人間」

Netflixシリーズ「ガス人間」現代社会の病理を真っ向から撃ち抜いたネオ・ノワール、そして悲恋の物語 ※注!ネタバレ含みます

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※本記事は物語の結末に触れているため、未見の方はご注意ください。



Netflixシリーズ「ガス人間」あらすじ

謹慎中だった刑事・岡本賢治(小栗旬)は、前代未聞の殺人事件の捜査に駆り出される。生放送番組に出演中の大学教授の身体が突如として膨張し、爆死したというのだ……。現場に向かった賢治は、かつて愛した女性で事件を目撃した報道記者・甲野京子(蒼井優)と再会。驚く暇もなく、《ガス人間》を名乗る男(UTA)が連続殺人を予告し、世間は大パニックに陥る。犯人逮捕と真相究明に乗り出す賢治と京子だったが、2人をあざ笑うように次々と消されていくターゲットたち。果たしてガス人間とは何者なのか? なぜ特異な能力を手にしたのか? その真の目的とは一体? やがて事態は警察・マスコミ・動画配信者・裏社会の住人たち・時の権力者――各々の思惑が入り乱れる攻防戦へと発展。事件を覆う分厚いガスが晴れたとき、この国を根幹から揺るがす壮絶な真実が姿を現す!


Index


日韓の鬼才が企てた壮大なリ・ボーン



 『美女と液体人間』(58)、『電送人間』(60)――。東宝がかつてスクリーンに放った、「変身人間シリーズ」。その第3作にあたる『ガス人間第一号』(60)は、そのなかでもひときわ異彩を放つ。監督・本多猪四郎と特技監督・円谷英二のタッグが産み出したのは、身体を気体に変える能力を得た男・水野(土屋嘉男)と、日本舞踊の家元・藤千代(八千草薫)の、あまりにも切ない悲恋物語だ。


 世界を壊すのではなく、ただ愛する女性を支えるためにその能力を捧げる。怪人でありながら、フィルム・ノワールの主人公のごとき孤独を背負う水野の佇まいは、あまりに異端。特撮映画の皮をかぶった純愛メロドラマという、極めて倒錯的な美学を完成させたのである。


 そんな伝説のフィルムが、半世紀以上の時を経てNetflixシリーズ「ガス人間」(26)として蘇った。


 この壮大なプロジェクトを託されたのは、『新感染 ファイナル・エクスプレス』(16)などで、階級社会の闇をエンターテインメントに昇華させてきたヨン・サンホ。東宝特撮のDNAを現代に蘇らせるため、韓国の鬼才に白羽の矢が立った。


 東宝から「変身人間シリーズ」の再映像化企画を打診されたヨン・サンホは、提示された候補から本作を選び取ったという。「いま観ても非常に完成度が高くSF的な表現も巧みな素晴らしい作品でした。現代的な映像作品として新生したら、きっと面白いものになるものになると感じました」(※)と語る通り、現代社会を映し出す寓話としてのポテンシャルを感じたのだろう。彼はオリジナルの「異能を得た孤独な人間の悲哀」を、「搾取と階級の地獄」へと大胆に読み替えてみせた。



Netflixシリーズ「ガス人間」


 かつてはハリウッドに行かなければ実現できなかったジャンル大作が、今はNetflixというグローバルプラットフォームを通じて、アジアから世界へ直接発信できる。その巨大なスケール感も、彼を強く突き動かしたに違いない。


 ヨン・サンホが新しい「ガス人間」を具現化するパートナーとして指名したのが、片山慎三監督。ポン・ジュノ監督のもとで助監督を務め、『岬の兄妹』(19)や『さがす』(22)などで、社会の周縁に生きる人々の業を見つめ続けてきたフィルムメーカー。その冷徹な視線で切り取られる映像世界は、まさに社会派サスペンス・ノワールの美学そのものだ。


 社会の搾取構造を容赦なく設計するヨン・サンホのマクロな視点と、底辺で生きる人間の生々しい肉体や業を捉える片山慎三のミクロな視点。この日韓の鬼才タッグが、特撮映画のクラシックをパンチの効いた社会派サスペンスへとリ・ボーンさせたのである。





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