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『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』記憶から失われても、本能は覚えている。そこに生きる希望がある

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『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』記憶から失われても、本能は覚えている。そこに生きる希望がある

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「記憶消去」と本能による「反応」



 MJやネッドがどこで何をしているのか。ピーターはSNSで彼らの日常を追うことはできる。何なら、同じニューヨークに住んでいるのだから、知り合うことも可能だ。そして予想どおり再会は用意されるのだが、“記憶から消えた”存在としてのピーターの孤独は、より際立つことにもなる。メイおばさんという大切な肉親も亡くしているピーターの孤独感は『BND』に貫かれ、そこにトム・ホランドの前3作とは異なるアプローチの演技が試されることになった。今回はマスクの内側の目や声が、その苦悶も静かに伝える。


 これまでの3作では、スパイダーマンの最大の武器であるウェブ(蜘蛛の糸)を装置=シューターから発射していたピーターだが、『BND』では肉体の異変によって手首から生(なま)のウェブが出るようになる。その量や方向、タイミングを調節するのに四苦八苦するプロセスで、自分のウェブの中に繭のように閉じ込められるシーンもあり、これは彼の孤独感を視覚的に鮮やかに表現する。



『スパイダーマン:ブランド・ニュー・デイ』©2026 CPII. All Rights Reserved. © & TM 2026 MARVEL


 MJやネッドの失った記憶は戻るのか? 安易な解決を求めたら完全に興醒めなのだが、『BND』は過去の成功例と同じく、そこを美しく織りなしていく。それは『時をかける少女』(83)のラストで、記憶が消された2人がすれ違いながらも、何かを感じたように。あるいは『エターナル・サンシャイン』(04)で、たがいの存在を忘れた2人が、理由もわからず惹かれ合ったように。その人を知らないはずなのに、前にどこかで会ったかもしれないと感じる。頭では忘れているのに、身体が本能的に反応してしまう。ちょっと例えは違うが、『ゴースト/ニューヨークの幻』(90)で、霊媒師の手に亡き恋人の存在を察知した感覚が思い出されたりも。毎日記憶を失うため、自分のことを初対面だと思う相手に、懸命に安心感を与えようとする『50回目のファーストキス』(04 日本版:18)の主人公の努力も、今回のピーターからMJに向けた秘めた想いに重なってしまう。このように「記憶消去」と「反応」の側面で、過去の映画も甦りつつ、その部分が繊細に、さりげなく演出されたことで、『BND』はスーパーヒーロー作品でありながら、独自の深い余韻を残すことになった。




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