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『PEACOCK/ピーコック』色彩を越え、失われた個性を取り戻すまでのユーモラスな軌跡

© 2024 NGF GEYRHALTERFILM CALA FILM ZDF/ARTE

『PEACOCK/ピーコック』色彩を越え、失われた個性を取り戻すまでのユーモラスな軌跡

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 レンタル人材ビジネス─それはサービスを提供する側が、依頼者の必要とする“誰か”に成り代わって、役割を果たしたり、演じたりする仕事のこと。このところブレンダン・フレイザー主演の『レンタル・ファミリー』(25)をはじめ、日本発祥の同ビジネスに材をとった映画の公開が相次いでいるが、オーストリアで制作された『PEACOCK/ピーコック』(24)もまた、着想のきっかけは日本にある。


 ベルンハルト・ウェンガー監督は、2014年に一つの記事をきっかけにこのビジネスに強く興味を募らせ、2018年頃に来日。同業に携わる人から直接話を聞くなどの取材活動を行い、それから数年がかりで長編企画へと膨らませた。


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自分という個性を失った男の物語



 ただし、本作の舞台は日本というわけではなく、オーストリアだ。レンタル人材会社に勤務する主人公マティアス(アルブレヒト・シュッフ)は、依頼者の求めに応じてどんな役柄でも完璧にこなす。これまでのところ利用者からは高評価を得ており、ビジネスも生活も安定しているようだ。しかし一つだけ問題がある。それは、この仕事に打ち込みすぎるあまり、彼が己の感情や個性をどんどん失っているらしいこと。



『PEACOCK/ピーコック』© 2024 NGF GEYRHALTERFILM CALA FILM ZDF/ARTE


 最初に異変に気づいたのは恋人だった。いつからか2人の会話はすっかり枯渇。何を聞いても、何が起こっても、マティアスは何ら明確な意見や感想を口にしない。幻滅した恋人は「本当のあなたが感じられない」と告げて家を出ていった。途方にくれるマティアスは、同僚の勧めに従い、高級スパでヨガのレッスンを受けるなどして、精神のリラクゼーションによって自分を取り戻そうとするのだが…。


 ご覧の通り、着想をもたらした題材は同じでも、ストーリーや展開は他作品に比べかなり異色だ。例えば、ハリウッド制作の『レンタル・ファミリー』では、サービスを提供する主人公が“自分”というものをしっかり維持した上で、請け負った仕事や役柄の中に納得できるリアリティ・ポイントを見出そうとする。対する『ピーコック』では完全に主人公が仕事に呑み込まれ、いわゆるアイデンティティ・クライシスが巻き起こる。これはもしかすると、アメリカ映画とヨーロッパ映画各々の着眼点の違いからくるものかもしれない。



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