1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. ヒトラーの毒見役
  4. 『ヒトラーの毒味役』過酷な運命に巻き込まれた女性たちの、一口一口の戦い
『ヒトラーの毒味役』過酷な運命に巻き込まれた女性たちの、一口一口の戦い

©2025 Lumière & Co. / Tarantula / Tellfilm / Vision Distribution

『ヒトラーの毒味役』過酷な運命に巻き込まれた女性たちの、一口一口の戦い

PAGES


イタリア人作家が受け継いだ想い



 加えてもうひとつ。本作がドイツ人俳優を擁した、イタリア人監督による、イタリア製作の映画ということも、多くの人の興味関心を呼ぶ点ではないか。


 ベストセラーとなった原作小説を執筆したのは、イタリア人作家のロッセラ・ポストリノ。彼女はイタリアの新聞に掲載された記事を通じてマルゴット・ヴェルクの証言を触れ、その瞬間、強く胸に訴えかけてくるものを感じたという。


 それから本人に面会を申し込むための手紙を送ろうとしたものの、ようやく住所を突き止めた時、ヴェルクはすでに亡くなっていた。結果的に、ポストリノがどうしてこれほどまでにヴェルクという存在に心惹かれたのかを、自身の気持ちに正直に向き合い、掘り下げるようにして書かれたものがこの小説にほかならない。



『ヒトラーの毒見役』©2025 Lumière & Co. / Tarantula / Tellfilm / Vision Distribution


 ちなみに、主人公の名前はヴェルクではなくローザに変えられ、フィクションを取り入れた形で執筆された。このローザという名前は、ポストリノの出生名にあたる。同じ女性として「もし現代を生きる自分がこの主人公だったなら何を思い、どう行動したか?」という強い問いかけがあったのは明らかだ。


 ヴェルクが遺した「一人の女性の視点」としての証言は、時代と場所を超えてポストリノに共感と衝動をもたらし、上梓された小説を介して世界中の読者へと広がった。そうして今回の映画化へと至った本作は、さながら「感情のバトン」。大切な想いを連綿と繋げるかのように育まれた作品と言えるのかもしれない。


参考文献:

「ヒトラーの毒味役」ロッセラ・ポストリノ著(2020年、オークラ出版)

https://www.theguardian.com/film/2025/may/26/no-meat-no-beer-and-hopefully-no-poison-the-curious-tale-of-hitlers-food-tasters

https://www.abc.net.au/news/2019-04-04/hitler-food-taster-novel-at-the-wolfs-table-rosella-postorino/10959950



文:牛津厚信 USHIZU ATSUNOBU

1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンII』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。



『ヒトラーの毒見役』を今すぐ予約する↓




作品情報を見る



『ヒトラーの毒見役』

配給:アンプラグ

新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開中

©2025 Lumière & Co. / Tarantula / Tellfilm / Vision Distribution

PAGES

この記事をシェア

メールマガジン登録
  1. CINEMORE(シネモア)
  2. 映画
  3. ヒトラーの毒見役
  4. 『ヒトラーの毒味役』過酷な運命に巻き込まれた女性たちの、一口一口の戦い