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『ホステル』“痛い”だけではない拷問ホラーが見据える真の恐怖

(c)Photofest / Getty Images

『ホステル』“痛い”だけではない拷問ホラーが見据える真の恐怖

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命の価値が金額で決まる、資本主義の風刺



 娼館と殺人の館との対比には、消費社会への風刺も宿っている。どちらも金さえ払えば、お望みのプレイができる。そして金額次第で、やれることは非道徳なまでに広がっていく。まさしく、資本主義の歪んだ側面。大金を持っていればいるほど、人間は自分が万能になったように思えてしまうのだろうか?


 また、そこには経済大国アメリカへの皮肉も宿っている。米ドルは世界中どこに行っても強い。これにモノを言わせて、米国からの旅行者はハメを外す。結果的に、米国は海外から、やっかみも含めて嫌悪される。それがよく表われているのが、殺人の館で人を殺す際の値段表だ。ヨーロッパ人を殺したい場合、金額は10,000ドルだが、アメリカ人を殺したければ金額は25,000ドルに跳ね上がる。つまり、米国人のパクストンやジョッシュは高値で売れる“商品”でもあるのだ。命の価値が金額で決まるのも資本主義のおぞましい発展の表れで、恐ろしさを加速させる要素でもある。



『ホステル』(c)Photofest / Getty Images


 タランティーノがいうとおり、おぞましい物語ではあるが、パクストンの逃亡が逆襲へと変わっていく終盤はアクションとスリルが息づいている。このシーンについてもタランティーノは「観客が思わず拍手する場面をつくれ」と、ロスに助言。それがどんな場面として昇華しているのかは、ここでは語らずにおくが、ロス監督らしい血まみれのシーンとなっていることは言っておきたい。最後の最後まで、本作はホラー映画から軸足がブレていない。


 2026年の今、改めてこの映画を観直すと、初公開時にはあいまいだった要素もはっきりしてくる。犯罪組織が金のために人身売買を行なっている現実は、これまでに報道されてきたとおり。近年はエプスタイン文書の開示により、資産家の非道な行ないが問題視されている。また、円安が極まった現代の日本人の視点から見ると、大金を持っている海外からの旅行者への視線をも連想させる。確かに『ホステル』は痛みをとらえたホラー映画だが、リアルに恐ろしいのは、資本主義のグロテスクな歪みではないだろうか。



文:相馬学

情報誌編集を経てフリーライターに。『SCREEN』『DVD&動画配信でーた』『シネマスクエア』等の雑誌や、劇場用パンフレット、映画サイト「シネマトゥデイ」などで記事やレビューを執筆。スターチャンネル「GO!シアター」に出演中。趣味でクラブイベントを主宰。



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