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“トーチャー・ポルノ(拷問ポルノ)”の先駆け
00年代はホラーというジャンルの可能性を押し広げた時期だった。若い観客にワーキャー言わせるショッカー映画から、中身のある恐怖ドラマへとトレンドがシフトしていった時期。その充実ぶりを受け、メディアは新進のホラー監督たちに“スプラット・パック”という呼称をつける。名を連ねるのは『マーダー・ライド・ショー』(03)のロブ・ゾンビ、『ハイテンション』(03)のアレクサンドル・アジャ、『ソウ』(04)のジェームズ・ワン、『ショーン・オブ・ザ・デッド』(04)のエドガー・ライトなどなど、今振り返るとそうそうたる顔ぶれだ。
イーライ・ロス監督もそこに名を連ねるひとり。疫病を題材にしたデビュー作『キャビン・フィーバー』(02)は先述の監督たちと同様、低予算で撮った作品だったが、アメリカ国内外で高い評価を獲得。ホラーに詳しく目の肥えたフィルムメーカーたちをも唸らせ、ピーター・ジャクソンは本作を賞賛、クエンティン・タランティーノは“これを撮ったヤツと一緒に仕事をしたい”と思ったという。そんな中で、ロスが監督第2作として、満を持して生み出したのが本稿の主役『ホステル』(05)だ。

『ホステル』(c)Photofest / Getty Images
ヨーロッパを旅行中の若い米国人バックパッカー、ジョッシュとパクストンは道中で意気投合したアイスランド人のオリーとともにアムステルダムにやってくる。目的はドラッグとセックス。金を払って享楽に走る彼らだったが、スロバキアにもっとすごいところがあると現地の若者に教わり、さっそく出発。その街のホステルは宿そのものが歓楽街のようで、宿泊客たちは性の自由を謳歌している。ところが、一夜を過ごしてオリーが姿を消し、翌朝にはジョッシュもいなくなった。残されたパクストンは消えた仲間を追って、廃墟にたどり着く。そこは奔放なバックパッカーをさらっては、血に飢えた金持ちたちに殺させる禁断の館だった……。
何より強烈だったのは後半、廃墟跡で展開する指やアキレス腱の切断、顔面損壊などの拷問描写。ロス監督によると、海外の映画祭で上映した際にはふたりの観客が救急車で運び出されたという。それほどまで強烈なホラーであることから、全米でも評価が分かれた。評論家のデヴィッド・エデルスタインは否定的に“トーチャー・ポルノ(拷問ポルノ)”と本作を呼んだが、この蔑称は皮肉にも、先行していた『ソウ』シリーズを含めて、ホラーのサブジャンルとして定着することになった。しかし、『ホステル』が暴力描写だけを売りにした映画でないことは言っておきたい。この映画にはリアリティがあるし、ドラマ面でも面白みがある。そんな魅力を、製作の舞台裏とともに振り返ってみよう。