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『恐怖分子』エドワード・ヤン的都市論 “構造としての都市”の姿

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『恐怖分子』エドワード・ヤン的都市論 “構造としての都市”の姿

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暴力と美学――台北の都市空間を切り裂く画と音の強度



 画がものすごく強い。編集のリズムもシャープだ。触れると血が噴き出そうなほどの鋭利なカッティング。台湾・国民党政権による白色テロ――長期に及んだ戒厳令の末期、台北のストリートに漂う荒涼としたざわめきが、不穏で殺伐としたノワール的強度と共に立ち上がる。1986年発表。エドワード・ヤン監督の長編第3作にして、台湾ニューシネマの到達点のひとつと評される破格の傑作が『恐怖分子』である。長編映画としては全7本、すべてが重要作と言える“エドワード・ヤン・ユニバース”の中でも、これほど美学的に突出した一本は他にない。1960年代のジャン=リュック・ゴダールばりに鮮烈な音と映像のフラグメント(破片・断片)の衝突があり、ミケランジェロ・アントニオーニのように都市空間の孤独や愛の不毛が描出される。


 『牯嶺街少年殺人事件』(91)の後、自らの独立プロダクションである原子電影(アトム・フィルムズ)を設立するエドワード・ヤンだが、これは中央電影公司(台湾)とゴールデン・ハーベスト(香港)の合作。メジャースタジオ作品とは思えぬほどの作家的純度が実現されつつ、キャストは当時トップスターだったコラ・ミャオ(91年に引退。現在はウェイン・ワン監督の夫人)をはじめ豪華な座組みだ。1986年、“中華圏のアカデミー賞”とも呼ばれる台湾の映画賞・金馬奨の最優秀作品賞に輝き、他にも第40回ロカルノ国際映画祭銀豹賞(審査員特別賞)、第41回カンヌ国際映画祭「ある視点」部門出品など、リアルタイムでも高い評価を得た。日本では1996年になって劇場初公開され、2015年にはデジタルリマスター版が上映。そしてこのたび2026年8月21日(金)からリバイバル公開となる。



『恐怖分子 デジタルリマスター』© 2010 Fortune Star Media Limited. All Rights Reserved.


 映画は、夜明けの台北の街を切り裂くパトカーのサイレンから始まる。カメラ好きの青年シャオチャン(リウ・ミン)は、文学を愛する恋人シャオウェン(ホアン・チアチン)の部屋で朝を迎えていた。壁にはマイク・ニコルズ監督の映画『バージニア・ウルフなんかこわくない』(66)のポスターが貼ってある。窓の外に目をやると、路上には棒切れのように倒れた男性の姿。そして乾いた銃声が数発。シャオチャンは思わず外へ飛び出し、突如起きた銃撃事件に向けて夢中でシャッターを切る。その混乱の中で、彼の視線――カメラアイを強く奪ったのは、現場から逃走する不良少女シューアン(ワン・アン)だった。アジトの部屋から飛び降り、左足を挫きながら、よろめきつつ立ち去るショートヘアの彼女。シャオチャンは取り憑かれたようにシャッターを押し続ける――。





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