『女は女である』あらすじ
キャバレーの踊り子アンジェラは、今すぐにでも子どもが欲しいと思っている。しかし恋人のエミールはそんな彼女に戸惑いを隠せない。そんな最中、アンジェラに想いを寄せていた青年アルフレッドが現れる……。
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アンナ・カリーナが少女時代と再会する
デンマークの家出少女だったアンナ・カリーナ。カリーナは、歌うことが大好きな少女だった。コペンハーゲンを訪れたカウント・ベイシー楽団のライブにトラブルがあったとき、ステージで歌を披露したカリーナ。14歳のとき、複雑な家庭に育った彼女はデパートのエレベーターガールとして生計を立てながらイラストレーターのモデルをしていた(「私は表情を作っていた。陽気な女の子、悲しげな女の子ってね」)。歩いている姿が踊っているように見えたという理由で、カリーナは短編映画のオーディションに合格する。しかし、カリーナは再び家出をする。ヒッチハイクでパリに旅立つ。パリに到着した当初は、サンジェルマン通りで物乞いをしたこともあったという。やがてデンマークの家出少女は、ドゥマゴでモデルとしてスカウトされる。数日後、「ELLE」誌のオフィスでココ・シャネルに出会う。この出会いが彼女の出発点となる。ココ・シャネルは“アンナ・カリーナ”の名付け親となった。
「アンナ・カリーナへの贈り物」。ジャン=リュック・ゴダールのフィルモグラフィーにおいて、異例なほど祝祭的といえる『女は女である』(61)は、ひたすらにカリーナを讃えている。カリーナの“二度目の生誕”を祝福している。カリーナが演じるのは、デンマークのコペンハーゲンからやってきた、アンジェラ(Ange=天使)という名のヒロインだ。アンジェラは書店員のエミール(ジャン=クロード・ブリアリ)と暮らしている。結婚はまだしていない。アンジェラはキャバレーで仕事をしている。彼女は舞台で踊り、歌い、スクリーンを通して観客に語りかける。カリーナはこの作品を撮ることで、少女時代の本名ハンネ・カリン・バイヤーと幸福に“再会”したといえる。さらにこの作品は、ゴダールとカリーナの結婚の前祝いのような作品でもある(撮影中にカリーナの妊娠が判明する。撮影後に2人は結婚式を挙げている)。ゴダールは色彩を爆発させている。タイポグラフィを含む、美術、造形、デザインの才覚を爆発させている。何よりカリーナへの愛を爆発させている。

『女は女である 4K修復版』(c) 1961 STUDIOCANAL - Euro International Films,S.p.A.
『女は女である』は、1961年のベルリン国際映画祭で銀熊賞(最優秀女優賞)と銀熊賞特別賞を受賞している。授賞式で涙を流すカリーナの姿が、写真に残されている(ゴダールはパリに戻っていた)。制作順では前作にあたる、ゴダールとカリーナによる初めての作品『小さな兵隊』(63)が、検閲によって公開禁止の措置をとられていたため、『女は女である』はカリーナの本格的なデビュー作となる。カリーナのキャリアは、ここから開花する。ゴダールとカリーナのコラボレーションは、レガシーを築いていくことになる。しかし2人が私生活で本当に幸せだった時期は、驚くことに『女は女である』までといえる。結婚をした2人には、お互いを傷つけ合う日々が待っていた。私生活の2人が辿ることになる道を考えるとき、キッチンで卵を落としたアンジェラの台詞は苦しく、せつない。「笑っていいのか、泣いていいのか」。カリーナはゴダールとのコラボレーションについて美しい言葉を残している。
「結局のところ、私たちが一緒に作った映画の台詞は、私たちが交わさなかった会話のようなものです。心に残る会話です。」(アンナ・カリーナ)*1