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『ヒンド・ラジャブの声』底知れぬ痛みと衝撃。それでもなお、向き合わずにいられない現代の重要作

Ⓒ MIME FILMS - TANIT FILMS

『ヒンド・ラジャブの声』底知れぬ痛みと衝撃。それでもなお、向き合わずにいられない現代の重要作

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23分間の拍手に包まれた渾身の一作



 数年に一度、胸を深く抉る映画と出会うことがある。それは生じた感情をすぐさま言語化して割り切れるようなものではなく、ましてや感動の涙を流してリフレッシュする類のものともまったく違う。『ヒンド・ラジャブの声』(25)から受け取るのは底知れぬ痛みだ。映画が幕を閉じてもなお、痛みは終わるどころか楔となって何度も打ちつけられ、その衝撃の余波が体内に響き渡っていく。


 ヴェネツィア国際映画祭(銀獅子賞を受賞)での上映終了時、23分にわたって拍手が鳴り止まなかったというが、今なら理由がよくわかる。作り手への賞賛も当然あったはず。しかしこの拍手に込められた想いはむしろ、怒りであり、苦悶であり、慟哭であり、祈りだったのだと私は思う。渾身の89分を突きつけられ、観客一人一人がすぐさま世界へ向けて表明せずにいられない感情のうねりが、そこに生じていたのだろう。



『ヒンド・ラジャブの声』Ⓒ MIME FILMS - TANIT FILMS


現場に取り残された少女の物語



 これは2024年1月29日に起こった実際の出来事を描いた一作である。2023年10月のイスラム組織ハマスによるイスラエル襲撃以降、ガザ地区のほぼ全域がイスラエル国防軍との戦闘状態に陥る中、ヨルダン川西岸地区にある人道支援組織「赤新月社」(PRCS)の緊急通報センターに一本の電話が飛び込んでくる。ガザ地区のとあるエリアで、親族が乗り合った一台の車輌がイスラエル軍の激しい攻撃にさらされたというのだ。


 やがて緊急通報センターのスタッフは、回線を通じて車内に取り残された幼い少女との会話を試みる。名はヒンド・ラジャブ。年齢は6歳。彼女は自分の置かれた状況をどこまで理解しているのか、同乗者について「みんなねむっていて起きない」と言う。どうやら起きているのはヒンドだけらしい。「こわい!たすけにきて!」と悲痛な声をあげる彼女を、スタッフは代わるがわる勇気づけ、得られた情報をもとにガザ内の救急車が救助に向かえるよう手筈を整えようとする。


 だが、現実には高い壁が立ちはだかっていた。というのも、スタッフはまず調整責任者のマフディに手配を要請し、関連機関の仲介を通じてイスラエル軍との間で調整が行われ、ルートの安全性が担保された上で、ようやく救急車の現場出動が了承されるのだ。こうしている間にも幼い命は失われてしまうかもしれない。緊急通報センターのスタッフは悩み、憔悴し、互いに衝突しながら、各々が自分にできる全てを尽くそうとするのだが…。




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