マイケル・マンによるガンアクションの革命
マイケル・マン監督の『ヒート』はアル・パチーノ演じる刑事とロバート・デニーロ演じる強盗の戦いをスタイリッシュに描いたが、中盤の市街戦は映画史に残ると言われる。ここでバル・キルマーが見せた弾倉交換は陸軍の教官にも絶賛されるほどの見事さだったことは忘れえない。マイケル・マンはガンアクションに徹底したリアルさを求めることで有名だが、その出発点とも言える作品がある。彼の劇場デビュー作『ザ・クラッカー/真夜中のアウトロー』(81)だ。
ここでマンは主人公の金庫破りを演じるジェームズ・カーンに「コンバット・シューティング」の訓練を受けさせ、リアルな銃器の扱いを要求した。コンバット・シューティングとはアメリカで確立された「実戦的射撃術」のことで、主に拳銃をどのように扱えば戦闘において有効か、その実践法を体系的にまとめたものだ。ジェームズ・カーンはラストで敵の住居に侵入する際、このコンバット・シューティングをフル活用し、金庫破りとしては不自然なくらいの戦闘のプロらしい動きを披露。弾倉交換もしっかりと演じてみせた。
当時、『ザ・クラッカー~』が日本公開される際、映画評論家の故・水野晴郎氏が「すごい映画が現れた!」と興奮しながらテレビ番組で解説したとの逸話も残るが、それほどに『ザ・クラッカー~』はアクション映画ファンにとっては革命的作品だった。以降、コンバット・シューティングはアクション映画に定着し、拳銃を両手でホールドし、体を半身にして構えるウィーバースタンスという射撃姿勢が80年代のアクション映画を席巻することとなる。そんなマイケル・マンが開いた「ガンアクション道」の先頭に一躍躍り出たのが『ザ・アウトロー』なのだ。