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『12モンキーズ』ギリアム流タイムトラベルに埋め込まれた、ヒッチコック『めまい』の遺伝子

『12モンキーズ』ギリアム流タイムトラベルに埋め込まれた、ヒッチコック『めまい』の遺伝子

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無意識の中でどんどん『めまい』化していった舞台裏



 『12モンキーズ』を論じる上でもう一つ欠かせない名作、それがアルフレッド・ヒッチコック監督作『めまい』(1958)である。すでに『12モンキーズ』をご覧の方であれば、劇中、主人公とヒロインがヒッチコック作品をオールナイト上映している劇場に足を踏み入れる箇所を覚えておられるはず。ここで登場するのが『めまい』の“セコイアの森”をめぐるシーンなのだ。


この場面で、ジェームズ・スチュワートとキム・ノヴァクは、切り株の年輪を見つめながら、人の命の短さと儚さを噛み締める。実はそれから4年後に製作された『ラ・ジュテ』にも同様のセコイアの巨木のシーンが描かれており、これはなにも偶然の産物ではなく、どうやらクリス・マルケル監督が『めまい』を引用したものらしい(*2)。つまり、この一連の流れで言えば、『12モンキーズ』は孫引用のような立場となるわけだが、本作では『ラ・ジュテ』よりも直接的に、劇中場面そのものがスクリーンに大写しになるのが極めて特徴的だ。




 さらに面白いことに、このくだりから『12モンキーズ』は陶酔や妄想の度合いを広げるかのように、どんどん『めまい』化していく。ヒロインがブロンドのカツラを身につけて登場する場面はまさしく『めまい』的な瞬間の集大成だ。実はここでのカメラワークや編集のリズムも、無意識の中でまるっきり『めまい』を思わせるものへと傾いていったらしく、ギリアムらは後からそのことに気づいてハッとしたのだとか。


この時の心境については彼の発言を直接引用してみよう。

「こっちが気付かないあいだに、『めまい』が自らのリメイク版を作っているのか?編集室に座り、僕らは唖然としていた。気味が悪かったね」(*3)


*2、 「テリー・ギリアム/映像作家が自身を語る」イアン・クリスティ著、広木明子訳、フィルムアート社(1999/12) p.309

*3、 「テリー・ギリアム/映像作家が自身を語る」イアン・クリスティ著、広木明子訳、フィルムアート社(1999/12) p.311



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