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『12モンキーズ』ギリアム流タイムトラベルに埋め込まれた、ヒッチコック『めまい』の遺伝子

© Photofest / Getty Images

『12モンキーズ』ギリアム流タイムトラベルに埋め込まれた、ヒッチコック『めまい』の遺伝子

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『めまい』と『12モンキーズ』の共通点



 「まるでヒッチコックの幽霊がリメイクを作ってるかのようだった。全てが彼の映画に似てくるんだ。例えば、空港の場面はどことなく『北北西に進路を取れ』だ。恐らくああいう名作は無意識に頭に刻み込まれていて、気付かぬうちに映画作りに影響を与えるのだろうね」(*4)


 そう言われて両作を改めて見比べると、『めまい』でキム・ノヴァクの演じる役名が『12モンキーズ』の主演女優マデリン・ストウと同じ”マデリン”。それに『12モンキーズ』でブルース・ウィリスの演じる役名が『めまい』の主演男優ジェームズ・スチュワートと同じ”ジェームズ”だったりと、きちんとメモしておかないと正真正銘の“めまい”を引き起こしそうなほどの交錯が生じていることに愕然とさせられる。


 さらには、詳しくは書かないが序盤からどんどんミス・リーディングされていく構成などにも、『めまい』と『12モンキーズ』には切っても切り離せない共通点があるように思えてならない。



『12モンキーズ』© Photofest / Getty Images


 こうして本作は、たいそう複雑怪奇なタイムマシンを搭載しながらも、物語の核たる部分ではむしろ、遺伝子レベルで内包された宿命へと引き寄せられていくことになった。


 もちろん、何も知らずともその異様な物語を楽しむことは可能だが、『ラ・ジュテ』と『めまい』という映画的記憶を有していれば印象はガラリと変わる。観る者はまるで「少年が囚われ続ける“とある女性”のイメージ」と同じような感覚で、これらの「どこかで見たことのある映画的記憶」を無意識下にひしひしと感じながらこの時空の旅を続けてしまうはず。『12モンキーズ』にどこか「陶酔・めまい」型の感覚を覚えるのは、きっとそのせいなのかもしれない。


*4 ブルーレイ 『12モンキーズ』 (販売元:松竹)コメンタリー

(参考文献) テリー・ギリアム映像大全 」ボブ・マッケイブ著、川口敦子訳、河出書房新社(1999/10)



文:牛津厚信 USHIZU ATSUNOBU

1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンⅡ』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。


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