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『新感染 ファイナル・エクスプレス』“量”と“両”巧みな設定作りと演出の妙

(c)2016 NEXT ENTERTAINMENT WORLD & REDPETER FILM.

『新感染 ファイナル・エクスプレス』“量”と“両”巧みな設定作りと演出の妙

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車両という密閉空間の特性を活かした演出



 『新感染』が独自性を発揮している理由のひとつは、その設定にある。『ワールド・ウォーZ』では、ゾンビの対策方法を探しだすために主人公が世界各国への入国、脱出を繰り返すが、『新感染』では、基本的に高速鉄道の車内という密閉空間のなかで物語が進行する。そのため舞台条件はリセットされることなく、観客は登場人物とともに生き残るための手段を学ぶことができ、時間とともに登場人物への共感が増していく。


 同じ韓国の映画監督であるポン・ジュノが手がけた『スノーピアサー』も高速鉄道を舞台にしている。温暖化対策で散布された冷却物質が原因で氷河期に突入し、永久不滅のエンジンを搭載した列車スノーピアサーに乗れなかった者は死に絶えてしまった世界を描いた本作。スノーピアサーでは最後尾に貧困層が住んでおり、彼らが悲惨な状況を打破すべく革命を目論み、富裕層のいる前方車両を目指していく物語だ。『スノーピアサー』の設定の面白さは、主人公がダンジョンを攻略するがごとく、最後尾から前方車両へと突き進んでいくところにある。だから『スノーピアサー』の場合、主人公と敵対勢力との接点は常に1点だ。


 しかし『新感染』では、そのラインが複数存在する。『新感染』の舞台となる韓国高速鉄道(KTX)は、両先頭の動力車2両、客車18両の20両編成だ。出発間際に乗り込んだ感染者が駆け込んだのは12号車であったため、ほぼ中心でゾンビと生存者が分断。さらにその後の闘争により、ゾンビと生存者を分けるラインは複雑化していく。例えば、2両目に生存者、3両目にゾンビ、4両目に生存者、5両目にゾンビといった具合に分断され、場合によっては逃げ場がなくなるという恐怖も襲いかかる。前後にしか移動できない車両という舞台特性を活かした演出がそこかしこに見られ、まさに手に汗握る。



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