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『ビューティフル・ボーイ』が描いた「希望」と「光」。ドラッグ依存と闘った実在の父子の映画化

(c)2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC. (c)François Duhamel

『ビューティフル・ボーイ』が描いた「希望」と「光」。ドラッグ依存と闘った実在の父子の映画化

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これまでにないリアルな形で「ドラッグ依存」を描く



 ティモシー・シャラメが演じる息子ニックは、若くしてドラッグに手を出し、父が気づいた頃にはもう手のつけられないくらいに症状が及んでいた。父は何度となく息子を闇から救い出そうとするが、立ち直ったかと思うと、また思いがけない瞬間から闇が始まる。父は「なぜ?」と問いかける。息子には自分でもその理由がわからない。わからないからこそ、再発のたびに絶望的なまでの罪悪感と悲壮感に押しつぶされていく————。


 ドラッグを扱った多くの映画は、その答えを「心の弱さ」や「過去のトラウマ」などのわかりやすいところへ持って行きがちだ。そして最終的に待つのは、悲劇的な死というバッドエンドか、あるいは克服という名のハッピーエンドか。そのような描き方は問題をセンセーショナルに扱うだけで、実際に悩み苦しむ当事者や家族から見れば、単なるご都合主義や偽りの域を出ない。



『ビューティフル・ボーイ』(c)2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC. (c)François Duhamel


 一方、ブラッド・ピット率いるプランBエンタテインメント社が「この物語をぜひ映画化したい!」と感じたのは、二つの回顧録がそのいずれのケースにも当てはまらず、非常に率直かつ真摯な姿勢でこの問題を見つめようとしていたからだ。


 では本作はどう違うのだろうか? 一言で表すと「愛の物語」なのだ。何度も再発し、結果的に息子から裏切られるような形になったとしても、この不条理な状況をすべて受け止めた上で、なお愛を貫くことができるだろうか。その試練に立たされた父デヴィッドを中心に、最愛の息子の状況をなんとか理解しようとする家族の奮闘や心の揺れが描かれていく。それゆえこの映画はこれほど光に満ち溢れ、感動的なのだ。



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