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ドラッグ依存と闘った実在の父子の映画化『ビューティフル・ボーイ』が描いた、「希望」と「光」

ドラッグ依存と闘った実在の父子の映画化『ビューティフル・ボーイ』が描いた、「希望」と「光」


絶えず光を失わなかったその根底にあるもの



 ヒュルーニンゲン監督は言う。「これはドラッグ依存の物語である以上に、それを克服しようとする物語だ。そこには“希望”がある」。また、脚本家デイヴィスは「素晴らしいのは、困難な中にあってもこの映画が絶えず“輝き”を創り出すところだ」と語っている。


 そう、本作には希望がある。そして輝きがある。ニックとデヴィッドを中心に描きながらも、その他の素晴らしい家族のことも忘れてはいないし、海辺に打ち寄せる波やスプリンクラーなどの水のイメージ、自然、木々、陽光、音楽、詩、幾度も繰り返される「everything」という言葉など、様々なエッセンスが相まって一つの有機的なエモーションを紡ぎ出している。我々が絶えずこの作品に魅せられるのはそのためだろう。


 ちなみにタイトルの「ビューティフル・ボーイ」は、ジョン・レノンとオノ・ヨーコのアルバム「ダブル・ファンタジー」の収録曲から引用したもの。当時5歳だった息子のショーンに対して贈られた「人生は長い道のり。毎日、あらゆることが少しずつ良くなっていくんだよ」(作品プレス資料より)という内容のメッセージが、本作ではデヴィッドからニックへの愛情となって一身に注がれていく。



 デヴィッドにとって、ジョン・レノンはどのような存在だったのだろう。筆者はこの伝説的な取材について一冊に纏められた「ジョンとヨーコ ラスト・インタビュー」(集英社/1990年)を紐解いてみた。すると取材(そしてレノンの死)から10年を経た時点におけるデヴィッドの所感が「まえがき」として添えられていた。


「ジョンの言葉は私に語りかけてきた。私に危機が訪れた時、自分にとって重要な決断を下す時、日々のニュースにやるかたない思いをする時、私はその言葉を聞いた」


 「ジョンが私に残してくれたもののひとつに、人は自分がいかに無知であるか、またいかに苦しみに満ちた存在であるかと認めてしまえば良いのだ、という考え方がある。彼はこれが真実を見極めるための第一歩だと言った。(中略)そして真実とは、真に自分を解放してくれるもののことである」




 映画『ビューティフル・ボーイ』の鑑賞後に改めてこれらの言葉に触れると、デヴィッド・シェフという人物が、今なおレノンの影響を強く受け続けているように思える。


 伝説となった取材からおよそ30年後、「書くこと」「読むこと」という自らが持ち得る最大限の術を通じて父子の絆を深めようとした彼。それは、さながらレノンが息子に捧げて名曲を作り上げたのと、形こそ違うがそこに通底するものは同じ————そう感じるのは決して私だけでないはずだ。



引用文献

「ジョンとヨーコ ラスト・インタビュー」デヴィッド・シェフ(石田泰子訳/集英社/1990)


<参考記事URL>

http://time.com/5413761/beautiful-boy-film/

https://www.psychologies.co.uk/beautiful-boy-interview-author-david-sheff-when-your-child-addicted-drugs

https://www.thefix.com/beautiful-boy-interview-nic-sheff

https://www.screendaily.com/features/felix-van-groeningen-on-the-challenges-of-directing-beautiful-boy/5135224.article

https://www.slashfilm.com/beautiful-boy-director-interview/

https://www.flickeringmyth.com/2019/01/exclusive-interview-beautiful-boy-screenwriter-luke-davies-on-masculinity-manipulative-filmmaking-and-more/




文: 牛津厚信 USHIZU ATSUNOBU

1977年、長崎出身。3歳の頃、父親と『スーパーマンII』を観たのをきっかけに映画の魅力に取り憑かれる。明治大学を卒業後、映画放送専門チャンネル勤務を経て、映画ライターへ転身。現在、映画.com、EYESCREAM、リアルサウンド映画部などで執筆する他、マスコミ用プレスや劇場用プログラムへの寄稿も行っている。



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作品情報を見る




『ビューティフル・ボーイ』

4月12日(金)よりTOHOシネマズ シャンテ他にて全国公開

配給:ファントム・フィルム

提供:ファントム・フィルム、カルチュア・パブリッシャーズ、朝日新聞社

(c)2018 AMAZON CONTENT SERVICES LLC. (c)François Duhamel


※2019年4月記事掲載時の情報です。

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