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『アイ,ロボット』オリジナル脚本とアイザック・アシモフの小説の融合から生まれた
未来の車両
タトポロスは、映画中盤の山場である地下ハイウェイでの、カーチェイス・シーンもデザインした。そしてWETAデジタル社が、トンネルとUSロボティクス社のNS-5用輸送車をCGで描き、スプーナー刑事が運転する車がこの輸送車に襲われる。この時代の車両の特徴として、プロヤスとタトポロスが球状の車輪を考案した。これは360度どの方向にも回転が可能で、車軸の代わりに電磁的な反発力を用い、車体からわずかに浮かしているという設定である。
スプーナー刑事の車はウィル・スミスの演技と同時に撮影する必要があり、かつ2035年モデルの形状に現実感が求められた。そこで、アウディのジュリアン・ホーニヒにデザインが依頼された。アウディは、「バタフライ・アクション・ドア」と名付けた特徴的なリアヒンジ式ドアや、自動運転システム、HUD(ヘッドアップディスプレイ)などを搭載したコンセプトカーの「RSQ」(*10)を制作した。この車は、SFXスーパーバイザーのマイク・ベジナによって、5軸のアクチュエーターとターンテーブルを持つリグに載せられ、グリーンスクリーン撮影されている。
このアウディRSQは、将来実用化されてもおかしくないほどリアリティがあったが、ドライブレコーダーが付いていない点が気になった。これは、「ストーリーの邪魔になる」という理由からだろうが、「高度に自動運転が普及した社会だから必要ない」と好意的に解釈もできる(でもスプーナー刑事は過去に大事故に遭っているのだが…)。
*10 このアウディRSQは、ヴァージンシネマズ六本木ヒルズ(現・TOHOシネマズ六本木ヒルズ)での試写会の他、ニューヨークモーターショーやパリモーターショーなどでお披露目された。
ラニング博士の家
スプーナー刑事は、事件を捜査するためラニング博士の自宅を訪れる。この家は、非常に古風な造りの豪邸としてデザインされた。これに関してタトポロスは、「参考にカナダのロボット研究者の工房を見学したんだ。驚いたことに木製のベンチがあったり、骨董品が並んでいたり、全然ハイテクじゃないんだよ」と説明してくれた。
この屋敷が「デモリションロボット」と呼ばれる無人重機に破壊される場面も、80年代チックな手法で表現されている。68ショットあるVFXを担当した、レインメーカー・デジタル・ピクチャーズ社のデール・フェイは、クリエイション・コンサルタント社のデイブ・アスリングに、1/4~1/6スケールのミニチュア制作を依頼した。最終的にこのシーンは、実物大セットの破壊と、モーションコントロール撮影したミニチュアの映像に、CGの埃、建物の破片などをコンポジットしている。デモリションロボットも、ミニチュアとCGの両方が用いられた。
1982年に日本初のCGプロダクションJCGLのディレクター。EXPO'90富士通パビリオンのIMAXドーム3D映像『ユニバース2~太陽の響~』のヘッドデザイナーなどを経てフリーの映像クリエーター。NHKスペシャル『生命・40億年はるかな旅』(94)でエミー賞受賞。最近作はNHKスペシャル『スペース・スペクタクル 第1集』(19)のストーリーボード。VFX、CG、3D映画、アートアニメ、展示映像などを専門とする映像ジャーナリストでもあり、映画雑誌、劇場パンフ、WEBなどに多数寄稿。デジタルハリウッド大学客員教授の他、東京藝大大学院アニメーション専攻、早稲田大理工学部、日本電子専門学校などで非常勤講師。
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