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『アイ,ロボット』オリジナル脚本とアイザック・アシモフの小説の融合から生まれた

(C)2017 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

『アイ,ロボット』オリジナル脚本とアイザック・アシモフの小説の融合から生まれた


日本製のロボットがモデル



 もう1つのNS-5の特徴は、頭部やボディのカバーがトランスルーセント(半透明)にデザインされていることである。1998年にiMac G3が発売され、その半透明筐体が家電や文具など、あらゆる製品に模倣された。そしてこれがNS-5のデザインのコンセプトにもなったと、公式に発表されている。

 

 だがタトポロスが筆者に教えてくれたのは、意外な元ネタだった。「実際に直接ヒントにしたのは、写真集『Robo sapiens: Evolution of a New Species』(*9)の表紙だよ。プロヤスも、このアイデアをすぐに気に入り、透明感のあるロボットを作ることにしたんだ」。この表紙になっているのは、東京理科大学・機械工学科の原文雄と小林宏の研究室で開発されていた第二世代顔ロボットだ。このロボットは、半透明のシリコーン樹脂で出来た皮膚の下に、表情を変化させるための形状記憶合金によるワイヤーを張り巡らせたものである。実際タトポロスの初期デザイン画には、この表紙写真とそっくりなものがある。


 彼は「素晴らしいコンセプトだと感じたんだ。それでNS-5の顔の構造も、まずステンレスかチタンで出来たフレームがあって、透明な骨格がコンピューターを保護している。皮膚は導電性がある未来のシリコーン樹脂という設定だね。皮膚の裏には、神経システムとなる配線が何千と通っていて、シリコーン樹脂を筋肉のように動かして喋るといった理屈を僕らは考えていったんだよ」と説明してくれた。



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 タトポロスは、自分たちでCGモデルを作ってデザインの詳細を検討し、さらにプラスチックとステンレスで精巧な実物大マケット(雛形)を2体作っている。このマケットは必ず撮影現場に置かれ、CGのライティングや質感のリファレンスに用いられた。難しかったのは監督が望む半透明感に仕上げることで、様々な種類のサンドブラストを試して淡い乳白色を表現した。


*9 この本は邦訳「ロボサピエンス」も発売されている。



未来のシカゴの描写



 当初、映画の舞台は80年後のシカゴに設定されたが、20世紀フォックスは「観客が感情移入しやすいように」という理由で2035年に変更した。そこでプロヤスは、その時代の景観デザインをタトポロスに求める。プロヤスの注文は、『ダークシティ』のような陰鬱な雰囲気ではなく、青空の下で銀色のビル群が輝き、空中をモノレールが走り回る、まだ人々が科学に希望を抱いていた50年代的未来像だ。


 つまり、やたらゴチャゴチャしてアジア系の看板や巨大ディスプレイが並ぶ、『ブレードランナー』(82)以降のSF映画が抜け出せなくなってしまった世界観からの脱却だ。しかしこのことは、ヘタすれば『2300年未来への旅』(76)のような、生活感の欠如した万博会場風テイストになりかねない。


 そこでタトポロスはデザインにリアリティを与えるべく、現在のシカゴの街や、実際のロケ地となるバンクーバーを取材して、モチーフとなる建造物を取り入れて行った。そして、オフィス街は白や青系の冷たいトーンのフューチャリスティックな風景とし、車は全て地下を走っているという設定にした。その中心にそびえる108階建てのUSロボティクス社ビルには、ロビーに高さ20mの像を置いてスケール感を出している。この像は撮影用にかなり大きなセットが作られたが、欠けている部分はCGで補われた。


 一方、スプーナー刑事など一般人が暮らす郊外は、現在のシカゴに20%程の新しいビルを足した程度で、労働ロボットが働いている他は大きな変化はないと考えた。そこでシカゴ市役所から、将来の街作りプランのレイアウトを提供してもらい、これをベースにしている。


 スタジオ側のVFXスーパーバイザーとして選ばれたのは、ジョン・ネルソンである。彼は『ジャッジ・ドレッド』(95)、『グラディエーター』(00)、『マトリックス リローデッド』(03)、『マトリックス レボリューションズ』(03)、『ブレードランナー 2049』(17)など、都市の景観表現を得意とする人物だ。彼は第2班チームを指揮して、バンクーバーの街を1週間かけて空撮し、さらに主要建築物をライダーでスキャンしていった。これらの素材はニュージーランドのWETAデジタル社に渡され、バンクーバーを未来のシカゴに変えて行った。



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