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『ファイト・クラブ』映画史に強烈な爪痕を残した凄みとは?
“殴る”ことではなく、“殴られる”ことが武器と化す
“僕“とタイラーが作り出した殴り合いのクラブ、通称ファイト・クラブは暴力的ではあるが、いわゆるバイオレンスとは少々異なる。重要なのは殴ることではなく、殴られること。その痛みをとおして、彼らは自分が”生きている”ことを実感する。ヒロイン、マーラを演じたヘレナ・ボナム=カーターは、こう分析する。“これは痛みなしに、精神を死に追いやる社会に対しての、必死のメッセージよ。自虐行為と同じ心理で、精神的な痛みを消そうとして、肉体的な痛みを与え合うの”。
『ファイト・クラブ』(C)2014 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
“殴られる”ことは、やがては彼らの武器になる。タイラーは、クラブが主催される地下室の所有者のギャングを相手に、徹底的に殴られることでその場所を確保する。また、“僕”は上司に在宅勤務を要求する際、自身の拳で自分の顔面を徹底的に殴りつけ、その異常な行為によって要求を通してしまう。彼らは、とんでもない武器を手に入れたのだ。
『ファイト・クラブ』(C)2014 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.
しかし、タイラーはこの強みをステップにして、ファイト・クラブのメンバーを統率して爆弾テロを計画する。高級車を破壊しろ! コンピューターなんていらない! 高層ビルを爆破しろ! そんな破壊工作が、やがてマーラを危険にさらすことになり、“僕”はタイラーに反旗を翻す。ちなみに、原作に則って詳細に描かれるはずだった爆弾の生成過程は、ロサンゼルス警察の爆弾処理班からクレームが付けられたため、映画からはカットされた。