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『ガルヴェストン』犯罪ハードボイルドの枠を押し広げた、女優メラニー・ロランの監督作

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『ガルヴェストン』犯罪ハードボイルドの枠を押し広げた、女優メラニー・ロランの監督作

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※2019年5月記事掲載時の情報です。


『ガルヴェストン』あらすじ

故郷を捨て裏社会で生きてきたロイ(ベン・フォスター)がその日、ボスの勧めで行った病院で見せられたのは、まるで雪が舞うように白くモヤがかかった自分の肺のレントゲン写真だった。命の終わりが近いことを悟った彼は「どうせクソみたいな人生だ。死ぬならそれも仕方ない」そう自分に言い聞かせる。だが死への恐怖は彼を追い込み、苛立たせてゆく。その夜いつものようにボスに命じられるまま向かった“仕事先”で、ロイは突然何者かに襲われる。組織に切り捨てられたことを知った彼は、とっさに相手を撃ち殺し、その場に囚われていた若い女(エル・ファニング)を連れて逃亡する。彼女の名前はロッキー。家を飛び出し、行くあてもなく身体を売って生活していたという。組織は確実に2人を追ってくるだろう。全てを失い孤独な平穏を願いながらも女を見捨てることのできないロイと、他に頼る者もなく孤独な未来を恐れるロッキー。傷だらけの2人の、果てなき逃避行が幕を開ける。


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気鋭の犯罪作家とフランスの女性監督のコラボが決裂?



 映画『ガルヴェストン』のあらすじだけを知ると、懐かしい味わいのジャンル映画がやってきたと思うかも知れない。余命わずかと宣告された殺し屋が、組織のボスの裏切りに遭い、ティーンエイジャーの娼婦と一緒に逃避行をする。やがて殺し屋と娼婦の間に、男女とも疑似親子ともつかない愛情が芽生えていく……。


 この物語は『レオン』的というより、Vシネマ的なヤクザ物の典型パターンだ。やさぐれた犯罪者が、人生の最後に縁もゆかりもない少女を守ろうとするセンチメンタルなハードボイルド。しかし、本作の監督を務めたのがフランスの女優メラニー・ロランだと知れば、この映画が“よくあるジャンル映画”とは一線を画していると気づいてもらえるのではないか?


『ガルヴェストン』予告


 そもそも『ガルヴェストン』の原作は、気鋭の犯罪小説家ニック・ピゾラットのデビュー作「逃亡のガルヴェストン」。ピゾラットの名前に馴染みがなくとも、異様かつハイクオリティな内容で絶賛されたドラマシリーズ「トゥルー・ディテクティブ」(14~)のクリエイターだと紹介すれば「おぉ!」となる人も多いはず。そのピゾラットが自ら脚本も手がけ、『最後の追跡』(16)、『足跡はかき消して』(18)などで近年評価がうなぎ上りの実力派俳優ベン・フォスターと、今をときめくエル・ファニングの主演で映画化されたのだ。


 ただし完成した作品に、ピゾラットの名は脚本クレジットに残っていない。脚本家として記載されているのはジム・ハメットという人物。おそらくハードボイルド小説の大家ジム・トンプソンとダシール・ハメットをミックスしたであろう、かなり安直な偽名だ。一体ピゾラットと製作陣の間にどんな問題が生じたのか? その舞台裏を探ると『ガルヴェストン』でメラニー・ロランが試みた果敢な挑戦が見えてくるのである。



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