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『ダンケルク』戦闘機も船も実物を使用。過剰なまでの「本物志向」で、先達の意思を受け継ぐクリストファー・ノーラン

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『ダンケルク』戦闘機も船も実物を使用。過剰なまでの「本物志向」で、先達の意思を受け継ぐクリストファー・ノーラン

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音ですら「作りもの」は使わない



 本物の戦闘機が撮影に使われた『ダンケルク』は、空中戦のシーンでも、もちろんCGで戦闘機が追加されることはなかった。


 クリストファー・ノーラン自身、何度もスピットファイアの飛行を体験。IMAXカメラを使って、どのように撮影するかを模索した結果、特殊なレンズ固定装置をパイロットの肩越しに設置することで、観客もパイロットの目線を体感できる映像が追求されることになる。


 そして本物のスピットファイアの外部には手が加えられないため、スピットファイアに似た飛行機の翼にボルトを打ち込み、そこにもカメラを設置した。さまざまな実験が繰り返され、リアルな飛行シーンが完成されていったのだ。


『ダンケルク』メイキング


 さらに注目すべきは、「音」である。戦闘機のエンジンやプロペラの音、コックピット内が振動する音。パイロットの耳に届くあらゆる音がマイクで録音された。そこにも作り物の入る込む余地はなかった。


 この空中戦は、アクション映画を観慣れた人にとって、おそらく違和感もあるかもしれない。ところどころ思わぬ揺れに襲われたり、視界が見づらくなったり、また過剰な音に支配されたりする瞬間がある。それらはすべて、本物のスピットファイアに乗った感覚を観客に伝えるための、ノーランの苦心の表れでもある。


 映画ファンは、近年のアクション大作で「ありえない瞬間」を目にしたとき、それがCGか、実写か、判断できる肥えた目が養われている。どんなに奇想天外な映像でも、CGの場合、何となく予定調和な仕上がりだと感じてしまうのだ。本物を使った実写にこだわるクリストファー・ノーランの作品が、逆に斬新な時代になったのは、皮肉としか言いようがない。



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