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『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』ロビンとマット、ベン、そしてガス・ヴァン・サントが出会った運命

(c)Photofest / Getty Images

『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』ロビンとマット、ベン、そしてガス・ヴァン・サントが出会った運命

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無名時代のマット・デイモンとベン・アフレックが書いたシナリオ



 もともと、この映画の脚本は、マット・デイモンがハーバード大学在籍中に書き上げた草稿が基になっている。主人公ウィルがセラピストと一緒にいて、壁にある絵の話をする場面が劇中に登場するが、最初からこの場面は脚本にあったようだ。また、映画の舞台になっているMIT(マサチューセッツ工科大学)をマットが訪ねた時、同行した弟のカイルが廊下にある黒板にチョークでウソの方程式を書いたら、それが何か月も消されなかったので、これもアレンジして脚本に入れた。また、主人公ウィルの恋人の名前はスカイラーだが、マット自身も当時、スカイラーという医学部の学生とつきあっていたという。


 この映画のエピソードは「実話ではないが、実際に起きたこと」をいろいろと盛り込んでいるようだ。最初はマットひとりで書いていたが、途中から幼なじみのベン・アフレックも加わり、ふたりで書き上げていった(ちなみにふたりが初めて出会ったのはマットが10歳の時、ベンが8歳の時らしい)。


 完成した脚本を最初に持っていったのはロブ・ライナーが率いる映画会社、キャッスル・ロック・エンターテインメントだったが、シナリオのめざす方向性が合わず、しかも、マットたちが主人公たちを演じることを反対されたため、シナリオを引き上げた。そこでベンが『チェイシング・エイミー』(97)で組んだケヴィン・スミスに監督をもちかけたが、彼は自分向きの内容ではないと考えた。スミスの紹介でミラマックスのワインスタインにシナリオを送ったら、彼は若きマットとベンの才能に賭ける気になったという。


 ミラマックスで最初に監督候補になったのは、なんとメル・ギブソン。何か月か話し合いを続けたが、いっこうに進展の様子がない。結局はガス・ヴァン・サント監督のところに話がいった。ウィルの仲間のひとりを演じるベンの弟、ケイシー・アフレックは、すでに同監督とは『誘う女』でも組んでいた。本当はこの映画のドキュメンタリーを撮ることを希望していたが、監督のリクエストで仲間役を演じることになった。



『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(c)Photofest / Getty Images


 ウィルの恋人となるスカイラー役は、個性的な演技派のミニー・ドライバーが候補に上がり、マット、ベン、監督の3人は賛成したが、製作者のワインスタインだけは反対したという(「私はセクシーでもなく、かわいくもない。グウィネス・パルトローではなかったせいね」と彼女は後にコメントしている」)。


 人物の設定に関しては、何度かリライトもあり、ヴァン・サントは、ベン演じるチャッキーが工事現場で亡くなる設定や、ウィルがドライブの途中で事故死という設定も考えたが、このアイディアは不採用となった。また、映画のエンディングのアイディアは実はテレンス・マリック監督から出されたものだった。ベンが以前から彼と知り合いで、シナリオ執筆中に相談をしたら、「女性が途中で去って、男がそれを追う方がいい」と助言されたという。


 数学の描写に関しては、ハーバード大学やMITで実際に教鞭をとる教授たちに助言を受けてより正確な内容にしていったという。それまでまともな教育を受けていなかった青年が数学の数式で驚異的な才能を発揮する、という設定が現実とかけ離れているという声もあるようだが、実は20世紀初頭のインドにはシュリニヴァーサ・ラマヌジャンという、埋もれていた数学の天才児が実在した。劇中ではランボー教授(ステラン・スカルスガルド)がウィルの才能を見出し、友人ショーンに相談をする場面があるが、そこでひきあいに出されるのがラマヌジャンの話である。


『奇蹟がくれた数式』予告


 ラマヌジャンは正規の教育を受けていなかったが、すぐれた直感で様々な定理を発見し、ケンブリッジ大学のゴッドフレイ・ハロルド・ハーディ教授に発見され、英国に渡る。実はこの物語はジェレミー・アイアンズ(ハーディ教授)とデヴ・パテル(ラマヌジャン)の主演で『奇蹟がくれた数式』(16)として映画化されている。ロバート・カニ―ゲルの著書「無限の天才/夭折の数学者・ラマヌジャン」(91年刊行)が原作。『グッド・ウィル・ハンティング』よりさらに渋い仕上がりの英国映画だが、主演ふたりの好演で見ごたえのあるドラマになっている。



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