2019.06.14
オスカー受賞で、ハリウッドを背負う存在に
映画では、MITで掃除人として働く孤児のウィルがランボー教授に才能を見出され、彼の数学のレッスンとショーンの精神分析を受けながら、DVに苦しめられた過去の苦い体験を乗り越え、自分の殻を破り、新しい自分に生まれ変わっていく。妻を失って喪失感を抱えていたショーンとの葛藤や、ハーバード大学の実直な女子大生、スカイラーとの不器用な恋、工事現場で働く仲間、チャッキーとの友情など、いくつかの要素が盛り込まれ、青春時代のキラめきや痛みが描かれる。
物語そのものは、ものすごく新しいわけではないが、それでも、この映画が製作後20年以上を経ても、妙に心に響くのは、ひとつにはマット・デイモンやベン・アフレック、ケイシー・アフレックの若き日の思いが、役と重なってみえるせいではないだろうか。
『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』(c)Photofest / Getty Images
当時の彼らは無名だったが、成功したいという情熱を胸に秘めていた。そして、シンガー・ソングライターのように、その思いを生々しく自作自演してみせた。マット・デイモンは、今年(現在48歳)、英国のBBCラジオ番組に出演し、「当時のことをどう思いますか?」という質問にこんなコメントを返している。
「この映画のシナリオを書き始めたのは、僕が22歳ベンが20歳の時だった。でも、完成した時、僕は27歳、ベンは25歳になっていた。書いている時は、本当に先が見えず、成功できるかどうかも、分からなかったが、この作品で人生が大きく変わり、今も尾を引いている。これほど大きなインパクトを人生にもたらす作品には出会いないだろう」
この映画の脚本はアカデミー賞のオリジナル脚本賞を受賞して、マットとベンは一躍、時の人として脚光を浴びる。その後、マットは『ボーン・アイデンティティ』(02)シリーズでアクション・スターとしても成功し、ベンは監督作『アルゴ』(12)でアカデミー作品賞を受賞。ケイシー・アフレックはマットが製作した『マンチェスター・バイ・ザ・シー』(16)でアカデミー主演男優賞を獲得している。