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日本への偏愛に溢れた鬼才、ニコラス・ペッシェ監督が放つ『ピアッシング』という救済

日本への偏愛に溢れた鬼才、ニコラス・ペッシェ監督が放つ『ピアッシング』という救済


怪作・アート映画のミューズ―ミア・ワシコウスカ



 ペッシェ監督の流儀を目の当たりにするだけでも十二分に面白いが、1つの「映画」としても存分にトガっていて、なおかつ深い。ここからは、その要素として「ミア・ワシコウスカという女優の審美眼」「異端で真摯な“救済”の描出法」の2点で作品の魅力を紹介していこう。


 俗に「外さない俳優」というものがいる。よく名前が挙がるのはジェイク・ギレンホールやエル・ファニング、現在の日本であれば松坂桃李だろうか。映画好きであれば、「この俳優の出演作品は高確率で面白い」というストックを何人かは抱えているだろう。ごく個人的な嗜好も入り混じってはいるが、ミア・ワシコウスカという女優は間違いなくその筆頭だ。一言で言うなら、彼女の出演作品は「アーティスティクで壊れている」。


 一般的には『アリス・イン・ワンダーランド』(10)が代表作とされている彼女だが、本人の美意識からか、出演作選びは相当アート寄りだ。現在29歳のミアは、『イノセント・ガーデン』(13)『オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ』(13)『嗤う分身』(14)『マップ・トゥ・ザ・スターズ』(14)『クリムゾン・ピーク』(15)――パク・チャヌクにジム・ジャームッシュ、デヴィッド・クローネンバーグ、ギレルモ・デル・トロといった錚々たる鬼才たちと組んできた(『007』新作を手がけるキャリー・ジョージ・フクナガ、ガス・ヴァン・サント等の作品にも出演している)。


 上のメンバーを見てもわかる通り、強烈な作家性を持つ監督でなければ、ミアと組むことはできない。観客にとっては、若手や無名の監督であっても、彼女を射止めた時点で「何かヤバいものが見られる」期待値は保証されているのだ。




 ミア自身が選ぶ役柄というのも、一般的な美人女優とは大きく異なる。危険思想の吸血鬼やサイコパスの少女、童貞をもてあそぶ悪女、破滅的な薬物依存者。「薄幸」「不機嫌」「狂気」――そんな言葉が似合うキャラクターを好んで演じてきた。


 美しい瓶に入った劇薬のような、壊れやすく危うい女……文学的なSっ気の強いキャラクターが映える彼女が今回演じるジャッキーは、ファンにとっては「これぞ!」と首を縦に振りたくなる性癖の持ち主だ。


 ジャッキーを何とかして殺したいと思いながら、生真面目な性格からなかなか実行に移せない主人公リードをあざ笑うかのように翻弄し、立場を逆転させていく“焦らし”のテクニック。かと思えば、そばを離れるときには「ここで待っててね?」と寂しげに何度も確認し、リードが自宅を訪れると、緊張や不安を隠そうと饒舌になるいじらしさも併せ持つ。リアルにいたら確実に人生を破滅させられるだろうが、全男子が一度はお近づきになりたいと心の内で秘かに願う「ヤンデレ小悪魔」が、ここまで似合う女優もそうはいないだろう。




 信頼がおける役者が最も適した役どころで躍動するとき、極上の化学変化が生まれる。本作はその好例であり、ミア・ワシコウスカという女優は自力でそれを起こせる希有な存在。フルパワーの彼女に苛められる快感を骨の髄まで味わっていただきたい――と書くと語弊がありそうだが、まぁ実際そうだ。ゾクゾクは止めようがない。


 ただ、本作が変態映画なのか? と問われればそうではない(そういう側面で楽しむことはできるが)。過激な外見で飾り立てられてはいるが、『ピアッシング』の本当の姿は「トラウマからの解放」を扱った極めてマジメな作品だ。



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