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ヒッチコックの『鳥』が映画史に輝く3つの理由 ※ネタバレ注意

(C) 1963 Alfred J. Hitchcock Productions, Inc. All Rights Reserved.

ヒッチコックの『鳥』が映画史に輝く3つの理由 ※ネタバレ注意

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鳥襲来。特殊効果のために活用されたディズニーの合成技術



 では、襲撃してくる鳥たちはいかにして描かれたのか。これが二つ目の肝である。実際、撮影時にはトレーニングされた実際の鳥を使ったり、作り物を用いたりする場面も多かった。だがそれ以上に大部分を占めたのは、最新鋭の合成技術によるものだった。


 聞くところによると、60年代の合成の主流をなしていたのはブルースクリーンを用いた手法で、これだとどうしても合成した部分の縁に青い光を帯びたような違和感が出てしまう。本作で描かれる鳥たちはサイズが小さく、動きが俊敏で、しかもおびただしい量が一斉に飛び交うこともあり、この技術をそのまま応用すると違和感が増幅されることは明らかだった。ヒッチコック率いるチームはベストな方法はないものかと試行錯誤を続けていった。

 


『鳥』(C) 1963 Alfred J. Hitchcock Productions, Inc. All Rights Reserved.  


 そこで「これならいける!」と確信したのが、ディズニー・スタジオが開発したナトリウム・プロセス(Sodium Vapor Process)と呼ばれるものだ。これには黄色いナトリウム・ライトと光信号の分配器が不可欠となる。これらを使って撮影することで従来の青い光が生じるのを抑え、従来に比べて違和感の少ない合成が可能になるのである(*3)。


 本作はユニバーサル製作の映画だが、ディズニーの伝説的な特殊効果エンジニア、アブ・アイワークス(1901〜71)が特別顧問としてクレジットされるなど、スタジオの垣根を越えた協力があったことは映画史的にも重要だ。ちなみにディズニーは『鳥』の翌年に『メリー・ポピンズ』(64)を公開し、当然ながらアイワークスはこちらでも大きな尽力を果たしている。


*3 『鳥』DVD収録ドキュメンタリーより



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