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『ゴールデン・リバー』が描いたのは、「西部劇」ではなく西部開拓時代に生きる人々の物語

『ゴールデン・リバー』が描いたのは、「西部劇」ではなく西部開拓時代に生きる人々の物語


ブロマンス展開が示す、登場人物の本音



 ブロマンスとは、兄弟(brother)とロマンス(romance)を混ぜた言葉で、ホームズとワトソンのような「男性同士の精神的な強い繋がり」を示す。肉体的な接触を介さない、愛に似た関係性ともいえるだろう。


 本作のキャラクターの属性としては、<粗野>チャーリー→モリス→イーライ→ウォーム<穏健>のようになっており、チャーリーはモリスに、イーライはウォームに惹かれていく。さらにイーライとチャーリーは兄弟で、モリスとウォームは共犯者。それぞれの絆も描かれ、本作は中盤以降、いわゆる「ラブイベント」が連続する。詳細は作品を観てのお楽しみということで省くが、「視線を交わす」「偶然通りかかる」「トラウマの共有」等、かなり意図的に恋愛映画の手法が取り入れられている。


 平和な暮らしに憧れるイーライはウォームの民主主義思想にシンパシーを抱き、不器用なチャーリーは生き下手なモリスの中に自分を見る。これまでは一対一だった兄弟は、それぞれに理解者を得ることで自身の心を肯定され、幸福を感じるようになる。




 本作では「家族」も重要な意味を帯びており、幼いころに父親を殺したチャーリーは家族という存在を畏れ、弟が身代わりになったと考えるイーライは平和な家族への憧れを抱いている。4人が酒を酌み交わすシーンは、友情をうかがわせつつも疑似家族的で、一種のハッピーエンドといえる。だからこそ、その後に待つ「黄金がもたらす事件」が悲劇性を帯びていくのだが……


 今回のメインキャストは全員が悪役を経験しており、さらにジョン・C・ライリーは『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』(14)、ホアキン・フェニックスは『ジョーカー』(19)、ジェイク・ギレンホールは『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(19)、リズ・アーメッドは『ヴェノム』(18)とアメコミ映画にも出演している。




 この4人が揃うのであれば絶叫や狂気が飛び交うドギツい展開を期待したくもなるのだが、冒頭で述べた通り本作で描かれるのは、あくまで「人間」だ。4人のブロマンスを観ていると、これまでの西部劇とは違った本作独自の視点が見えてくる。この中の誰も、望んでこの生き方をしているのではないということだ。一番西部劇らしいチャーリーも「これしかなかった」だけで、他を選べたならそうしただろう。


 裏切りサスペンスを期待する観客に提示されるのは、「裏切りたくはない、信じたい」という登場人物たちの切なる願い。命が簡単に吹き飛ぶ時代で、さらにこのような稼業で、寿命を全うすることは極めて困難だ。他者を信じることも容易ではない。だからこそ、魂が共鳴した人々とは仲間でいたい。それが、飾らざる本音なのだ。



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