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『ガタカ』運命は遺伝子を超える。切なさに満ちた傑作SF

『ガタカ』運命は遺伝子を超える。切なさに満ちた傑作SF

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「共感」「拒絶」「過去」「未来」を担う脇役たち



 『ガタカ』を観ていく中で最も多く去来する感情は、やはり「切ない」だろう。本作にはビンセントに影響を与える4人の人物が登場する。ジェローム、同僚アイリーン(ユマ・サーマン)、適正者の弟アントン(ローレン・ディーン)、医師レイマー(ザンダー・バークレー)だ。彼らとのエピソードには、全て違った色合いの「切なさ」が付随している。


 まずは、ジェロームについて。本作で描かれる「夢」は、1人分ではない。事故で車いす生活となり、金メダリストへの夢を絶たれたジェロームもまた、ビンセントによって生きる意味を与えられた存在だ。


 抱いた目標は違えど、夢への想いは同じ。互いに欠落しているから、1人を演じることで完璧になれる。ビンセントの唯一の理解者として彼を支え続けるジェロームの秘めたる想いが明かされる後半は、本作のハイライトの1つだ。イーサンとジュードが体現する「遺伝子の格差を越えた真の友情」は、いつ観ても透き通っていて美しい。




 ビンセントとアイリーンのラブストーリーは、やや複雑な形をしている。ビンセントはアイリーンに惹かれていくが、彼女が返す愛は「適正者」だと信じているからだ。2人の最後の会話は作中でも屈指の名ゼリフだが、ビンセントが全ての適正者に対してずっとぶつけたかった感情でもある。アイリーンとジェロームは対となる存在であり、それぞれに「共感」と「拒絶」を担っている。本作がブロマンスとしても名高いのは、この構造によるものだ。


 ビンセントの「過去」と「未来」を請け負うのが、常に兄の先を行くアントンと医師としてビンセントを査定するレイマーだ。劇中で幾度も描かれるビンセントとアントンの遠泳対決は、「遺伝子の優劣」を表現しているといえるだろう。海原はそのまま子宮のメタファー。優れた精子=アントンは、先に卵子=ゴールにたどり着くのが自明。だがビンセントはあるとき、その理を覆す。彼が個人を抹消してまで夢に生きようと決めたのは、絶対に勝てなかったはずのアントンをたった1回だけ超えたからだ。アントンとレイマーは、共に「不可能はない」とビンセントに気づかせる。


 「共感」「拒絶」「過去」「未来」……全てを越えた先に待ち受けているのは、夢にまで見た夢。心は今、「不適正者」という重力から解き放たれた。


運命までは操れない。

僕は、僕だ。



文: SYO

1987年生。東京学芸大学卒業後、映画雑誌編集プロダクション・映画情報サイト勤務を経て映画ライターに。インタビュー・レビュー・コラム・イベント出演・推薦コメント等、幅広く手がける。「CINEMORE」「FRIDAYデジタル」「Fan's Voice」「映画.com」等に寄稿。Twitter「syocinema」



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(c)Photofest / Getty Images

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