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『第9地区』崖っぷちはチャンス!超大作の製作中止なくして、この異色SFは生まれなかった!

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『第9地区』崖っぷちはチャンス!超大作の製作中止なくして、この異色SFは生まれなかった!

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超大作で監督デビューのはずが、思わぬ頓挫?



 本作のプロデューサーを務めるのは『 ロード・オブ・ザ・リング』シリーズなどで知られるピーター・ジャクソン。彼は世界的な人気ゲーム「HALO」の映画化のためにスタジオ側やマイクロソフト側とも様々なやり取りを行い、精力的に企画を開発させてきた。そこで監督として白羽の矢が立ったのが俊英ニール・ブロムカンプだった。彼は当初、この超大作で監督デビューを迎える予定になっており、すでに主要スタッフも招集されて内容が具体的に詰められている状態だった。 


 しかし徐々に雲行きが変わり始める。マイクロソフトや映画スタジオ側との交渉が難航し、制作費の切り詰め、興収配分の取り決め、それに新人であるブロムカンプの起用に関しても不安視する声が上がったという。最終的に折り合うことは無理と判断したジャクソンはこの企画の中止を決定する。 


 ようやく掴みかけた監督デビューのチャンスをこのように失ってしまったブロムカンプ。夢は遥か彼方へ遠のいたかに思えた。だが、当のジャクソンはこんなことで若き才能のデビューの場を潰したりはしなかった。「HALO」を取りやめる代わりに、この集まった面々で何か他の映画を撮ろうとポジティブな提案を行うのである。 


 これは集まったみんなの努力を徒労のまま終わらせまいとする配慮もあっただろう。だがそれ以上に、今後ブロムカンプをしっかりとサポートして「監督デビュー」まで面倒を見るという親心にも似たような気持ちがあったのではないかとも推測できる。 


 そしてこの時、ブロムカンプに「あの短編を長編映画化してみては?」と初めて勧めたのがジャクソンの妻、フランシス・ウォルシュだったという。彼ら夫婦の存在がなければ、ブロムガンプは映画業界の厳しさに押し潰されたまま、この『第9地区』を生み出すきっかけすら得られなかったかもしれない。 


その後、本作が低予算にもかかわらず世界中で大ヒットを飛ばしたのは記憶に新しいところ。崖っぷちの状態は作り手にとって相当なプレッシャーとなろうが、その一方で失敗や挫折がのちの大きな成功につながることも多い。『第9地区』はその好例として私たちに多くのことを語りかけてくれるのである。



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