Photo by Eric Zachanowich. (c) 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved
レッドフォードの俳優引退作『さらば愛しきアウトロー』を託された若手監督の奮闘とは
2019.07.18
突如投げかけられたレジェンドからの誘い
それは青天の霹靂だった。ある日、1980年生まれの若手監督デヴィド・ロウリーのもとに「ロバート・レッドフォードが君に会いたがっている。ぜひ一度、話がしたいそうだ」との連絡が飛び込んでくる。
彼が手がけた『セインツ-約束の果て-』(13)という作品は、脚本開発の段階で(レッドフォードが率いる)サンダンス・インスティテュートの支援を受け、さらに初お披露目されたサンダンス映画祭でも大きな注目を集めた。でも、だからと言って、頭角を現したばかりの初々しい才能と、映画の一時代を築いたレジェンドが対面できる機会、ましてや一緒に仕事をするチャンスは滅多にあるものではない。こんな誘いの声がかかること自体、異例中の異例だった。
ロウリー監督の手元にはすでに原案が届けられていた。それは企画の発端となるニューヨーカー誌の記事。初老のメンバーからなる「黄昏ギャング」を結成し、何度も銀行強盗を企てた男、フォレスト・タッカーについて報じたものだった。彼は金を手にするために銃は使ったけれど、ただチラッと見せるだけで、銃弾をこめた事はなかった。犯行の際にはいつも丁寧に接し、窓口応対したスタッフも「紳士的だった」と口にするほどだったとか。
『さらば愛しきアウトロー』Photo by Eric Zachanowich. (c) 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved
レッドフォードはこれを映画化するというアイディアに惹かれ、ずっと可能性を探ってきた。そうして彼がロウリーの『セインツ』に触れた時、何か運命的なものを感じ取ったという。おそらくこの作品の美しくも繊細でヒリヒリする感触に、自分の感性と極めて近いものを感じたのだろう。
対面の場に赴いたロウリーは当然ながら超緊張していたというが、招き入れたレッドフォードは両者の窮屈な壁をすぐさま取り払い、二人がざっくばらんに意見交換できる状況を作り出した(こういうところもレジェンドたるゆえんだ)。そしてこの作品を、レッドフォードの初期作品を彷彿させるようなものにしたいという漠然としたリクエストも、伝えられていたそうだ。