Photo by Eric Zachanowich. (c) 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved
レッドフォードの俳優引退作『さらば愛しきアウトロー』を託された若手監督の奮闘とは
2019.07.18
「素晴らしい! でも、もっと“楽しく”なくちゃ」
彼はこの自分の流儀を持ったキャラクターの姿を借りて、常にワクワクすることに挑み続ける人生やその生き方を描きたかったのだ。
この段階でロウリーには「自分には合わない」として降りることもできたかもしれない。だが、彼は決してあきらめなかった。どういう内容がこの映画、いやもっと言うと「レッドフォード映画」として“楽しい”ものとなるのかを悩み続け、最終的には「もしタッカーが生きていれば(自分にまつわる)こんな映画が観たかったはず」というラインを探り、そこに映画界のレジェンドたるレッドフォードの人生や生き様といったものを巧妙に織り交ぜていった。
『さらば愛しきアウトロー』Photo by Eric Zachanowich. (c) 2018 Twentieth Century Fox Film Corporation All Rights Reserved
そうやって出来上がった作品には、レッドフォードならではの楽しみがいっぱい隠されている。冒頭に登場する「この映画もまた(also)、ほぼ実話である」との字幕は、レッドフォードの存在を世に知らしめた『明日に向って撃て!』(69)の冒頭を受けたものだし、終盤には『スティング』(73)の“あの仕草”も登場する。
また、作品内には彼の若き日の写真や、映画から借用した場面、さらにかつての名シーンを彷彿させる描写なども挟み込まれる。まるで我々は、映画という夢の中で、彼のフィルモグラフィーを泳ぎ渡っているかのよう。マーベル・シネマティック・ユニバースではないが、紛れもないレッドフォード・ユニバースがここに出現しているのだ。